海外仮想通貨取引所の利用はバレる?Web3時代のNFT・仮想通貨税務相談
- 2024-12-08
海外仮想通貨取引所の利用はバレる?Web3時代のNFT・仮想通貨税務相談
はじめに:海外仮想通貨取引所利用と税務調査のリスク
皆さん、こんにちは!街の税理士、村上です。
最近、Twitterで「海外の仮想通貨取引所での取引利益は日本の税務署にバレますか?」という質問を多く受けました。 結論から言うと、バレる可能性が高いと考えています。 今回は、その理由を詳しく解説していきます。
海外仮想通貨取引所はバレない? よくある誤解
多くの皆さんから「そんなことないだろう」や「村上、もっと現実を見ろよ」といった意見、また「海外取引所が情報を提供するわけないじゃん」といったご意見をいただきました。 しかし、残念ながら、海外仮想通貨取引所を利用していても、取引利益は税務署にバレる可能性が高いのです。
なぜなら、税務署は日本の取引所だけでなく、海外の取引所の利益も把握しようとしています。 バレてしまえば、税務調査に入り、追徴課税という形で重い税金が課せられます。 「海外取引所だからバレない」という考え方は、絶対に捨ててください。
租税条約とCRS(共通報告制度):税務署の情報収集能力
日本の税務署は、租税条約を通じて、海外の税務当局と情報を共有しています。 その代表的な制度が**CRS(共通報告制度)**です。
CRSとは、Common Reporting Standardの略で、多くの国々が参加する国際的な情報交換制度です。 この制度により、海外の金融機関は、居住者の金融口座情報を自動的に各国の税務当局に報告する義務があります。
租税条約とCRSの現状:情報交換の実態
国税庁が発表している資料によると、令和3年度と令和4年度のCRSによる情報交換件数は、なんと年間250万件にのぼります。 これは、海外から日本への情報提供件数です。 逆に、日本から海外への情報提供件数も、令和3年度には53万件、令和4年度には65万件と増加傾向にあります。
つまり、日本の税務署は莫大な情報を海外から受け取っているだけでなく、日本の情報を海外にも提供しているのです。 これは、仮想通貨取引所からの情報も含まれる可能性があることを示しています。
CRSの今後:強化される情報収集能力
さらに、今後のCRSは、強化される見込みです。 令和6年度の改正により、**暗号資産等報告枠組み(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)**が導入される予定です。
CARFは、OECD(経済協力開発機構)で策定されたもので、暗号資産の取引情報などを各国税務当局間で自動的に交換するための報告制度です。 これにより、仮想通貨取引所の取引情報がより容易に税務署に捕捉されるようになります。
仮想通貨取引でバレるリスク:4つのポイント
では、具体的にどのような点でバレる可能性が高いのでしょうか? 私が考えるリスクを4つのポイントに絞って解説します。
ポイント1:海外取引所の日本人ユーザー
海外の仮想通貨取引所にとって、日本人ユーザーは非常に重要なマーケットです。 Binanceのような、日本人向けの仮想通貨取引所も増加しています。 ある海外取引所では、日本人ユーザーが全体の半分以上を占めているというデータもあるほどです。
仮に、海外取引所が日本の税務署に協力的でない態度を示せば、日本政府は、日本人がその取引所を利用できないように規制する可能性があります。 これは、海外取引所にとって大きな損失となるため、日本の税務署に協力する可能性が高いと考えられます。
ポイント2:7年間遡及して調査可能
税務調査は、最大で7年間遡及して行うことが可能です。 現時点では、CRSや租税条約が完璧ではない部分があるかもしれません。 しかし、7年間の猶予期間は、税務署のブロックチェーン解析技術の向上や、調査能力の向上を考慮した猶予期間と捉えるべきです。 過去7年間に無申告や脱税があった場合、将来的にバレる可能性は非常に高くなります。
ポイント3:仮想通貨は脱税・マネーロンダリングの温床
仮想通貨は、脱税やマネーロンダリングに使われるケースも多く、世界中で大きな問題となっています。 北朝鮮が、仮想通貨ハッキングで得た資金をミサイル開発資金に使っているという噂もよく聞きます。
そのため、世界中の警察、サイバーテロ対策機関、税務署などが、仮想通貨の脱税やマネーロンダリングを厳しく取り締まっています。 技術も日々向上しているので、過去の不正も容易に洗い出される可能性があります。 国税庁も、毎年11月に発表する「所得税及び消費税等の調査の状況」において、暗号資産に関する調査状況を詳しく公表しており、その重要性を示しています。
ポイント4:その他のバレるリスク
取引履歴の直接的な収集以外にも、さまざまな方法でバレる可能性があります。
- SNSでの自慢: 高価な商品を購入した場合、その情報がSNSから税務署に伝わることがあります。
- 高額商品の購入: 高級車や不動産などの購入情報は、販売店から税務署に報告される可能性があります。
- 居酒屋での話: 仮想通貨で儲けたことを、居酒屋などで話してしまうと、その情報が税務署に伝わる可能性があります。
これらの情報が、税務署へのタレコミにつながる可能性も十分にあります。
バレた時のリスク:追徴課税の負担
税務署にバレてしまった場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられます。 国税庁の発表によると、令和3年度の暗号資産関連の調査では、1件あたりの申告漏れ所得金額は平均3659万円、追徴税額は1194万円に上ります。 令和4年度は申告漏れ所得金額が3077万円、追徴税額が1036万円となっています。
つまり、本来支払うべき税金に加え、約3割の追加税金を支払うことになります。 仮想通貨の税金はもともと高いのに、さらに高額な税金を支払う羽目になるのです。
まとめ:しっかり申告・納税を
結論として、海外の仮想通貨取引所を利用していても、完全にバレないとは言い切れません。 特に、7年間の遡及調査が可能であることを考えると、無申告や脱税は非常に危険です。
海外仮想通貨取引所を利用している方も、しっかり申告・納税を行いましょう。 万が一、過去に無申告や不正確な申告をしていたとしても、今すぐ修正申告を行うことで、追徴課税の割合を減らすことができます。
本記事が、皆さんの仮想通貨税務に関する理解の一助となれば幸いです。 ご不明な点は、お気軽にご相談ください。
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