時間は本当に絶対的なものなのか?相対性理論が明らかにする時間の驚くべき真実

時間は本当に絶対的なものなのか?相対性理論が明らかにする時間の驚くべき真実

時間とは何か?私たちの常識を覆す相対性理論

毎日24時間、1年365日。地球上に生きる全ての人々にとって、時間は平等に、同じように流れているように感じます。しかし、現代物理学、特にアインシュタインの相対性理論によれば、この常識は覆されてしまうのです。

この記事では、相対性理論が明らかにする時間の驚くべき性質について、分かりやすく解説していきます。時間とは一体何か?その本質に迫りながら、私たちが日常で経験できないような、時間に関する不思議な現象を紐解いていきましょう。

古代からの時間の定義と相対性理論の登場

悠久の時を超えて、人類は自然現象の規則性を元に時間を定義してきました。1日は太陽が昇ってから最高点に達し、再び同じ状態になるまでの時間。1年は季節の移り変わり、太陽の高度や星座の位置が同じになるまでの時間、といった具合です。

しかし、後世には機械式時計など、自然現象よりも高い精度で時間を計測できる技術が発展しました。これにより、人類は長い間、時間の流れは絶対的に一定であると考えてきました。

この固定観念を大きく揺るがすきっかけとなったのが、1905年、アインシュタインが発表した特殊相対性理論です。それ以前にも、時間の流れが観測者によって異なることを提唱した科学者はいましたが、アインシュタインの理論は光の速度の不変性と、空間と時間に対する考え方を根本的に変えたという意味で、非常に大きな意味を持ちます。

特殊相対性理論における時間の定義は、数年後にミンコフスキー空間という概念が提唱されたことにより完成の域に達します。これによると、時間は空間における前後、左右、上下と同様に、時空の1つの次元なのです。人類はこれまで空間と時間を全く別物として扱ってきましたが、実際は時空として統合できることが示されたのです。

特殊相対性理論と時間の遅れ

特殊相対性理論から導き出される予測が明確に否定されたことは未だないため、現在でも時間と空間を時空に統合するという考え方は間違っていないと考えられています。

時空の概念は、特殊相対性理論における時間と空間を数学的に扱うために作り出されたものです。時間だけに注目すると、特殊相対性理論では、私たちの常識では考えられないことが起こります。それは、速く動けば動くほど、時間の流れが遅くなるということです。

これは、光の速度が観測者によらず一定であるという前提を受け入れると、自然と導き出せる結論です。

例として、走る電車の中にいるミスター・バイエンスと、それを外から観察するあなた、この2つのケースを考えてみましょう。ミスター・バイエンスはリンゴを持っており、それをあるタイミングで落とすと、リンゴは電車の床に衝突します。あなたとミスター・バイエンスはそれぞれ何を目撃するでしょうか?

特殊相対性理論以前の物理学では、ミスター・バイエンスにとってリンゴはまっすぐ下に落ちたように見えます。これは当然でしょう。しかし、外で見ているあなたにとって、リンゴが落ちるまでの間に電車が横向きに移動しているので、リンゴの移動距離はあなたから見た方が長くなります。

距離は時間と速度をかけることで計算できるため、距離が変化したということは、時間もしくは速度が両者で異なるということを意味します。リンゴが落ちるまでの時間は両者で一致するはずなので、リンゴの速度が変化したということになります。

この場合、あなたにとって、リンゴは横向きにも移動している分、リンゴは斜め方向に、ミスター・バイエンスが観測した速度よりも速く落下すると説明できます。

では、今度はリンゴを落とすのではなく、下向きに光を放ってみたらどうなるでしょうか?リンゴと同様に、ミスター・バイエンスにとって光は真下に向かい、床のある一点に当たります。しかし、あなたにとっては、レーザーが打たれてから床に当たるまでの間に電車が横向きに移動しているので、光の移動距離はあなたから見た方が長くなります。

ここまでリンゴと同じです。しかし、特殊相対性理論においては、光の速さは観測者によらず一定という前提に立っています。「どういうことだ?」と不思議に思うかもしれませんが、この宇宙では、いかなる視点から見ても光の速度は一定になるというルールのもと成り立っているからです。これを光速度不変の原理と言います。

すなわち、あなたにとってもミスター・バイエンスにとっても光の速さは同じ秒速およそ30万キロメートルです。となると、両者間で光が移動した距離が食い違ってしまいます。距離は速度×時間なので、この場合では速度が同じなのに距離が異なる。そのため、両者にとって時間の進み方そのものが違うと考えるしかありません。

今回の場合、ミスター・バイエンスから見た方が光の移動距離が短いので、移動しているミスター・バイエンスの方が、あなたと比べて時間がゆっくり進むことになります。これが特殊相対性理論において、速く移動した方が時間の進み方がゆっくりになる理由なのです。

もちろん、光の速度は今回例に出した電車よりも圧倒的に速いため、私たちの日常生活においては、この効果は誤差程度です。普通に生きていて時間の流れが大きく狂うことはありません。

一般相対性理論と重力による時間の遅れ

しかし、話はここで終わりません。アインシュタインは後に、より発展させた一般相対性理論を発表しています。「一般」というのは、より広く当てはまるという意味で、「特殊相対性理論」の「特殊」はある特殊なケースのみに当てはまるという意味です。その特殊なケースとは、時空が歪んでいないときです。

一般相対性理論においては、重力は時空の歪みを起こす能力のことです。その結果として、重力が強い場所ほど、時間はゆっくりと進むことが知られています。

これに関しては、速く移動するほど時間がゆっくり進むことと、先に説明した等価原理が正しいという前提に立てば理解できます。等価原理とは、重力により自由落下してふわふわしている状態と完全な無重力状態は完全に同一であり、いかなる方法によっても区別できないというものです。

このような状況を考えてみましょう。ミスター・バイエンスが高所からジャンプし、自由落下を始めます。反対にあなたは、下で時計を持ちながら待ち構えているとしましょう。

自由落下を始めたミスター・バイエンスは完全に無重力状態と同じです。一方、建物の床に立っているあなたはどうでしょうか?

以前の説明の通り、重力は力ではなく時空の歪みです。一般相対性理論の考え方においては、あなたは歪んだ時空の中、床によって上向きに加速し続けていることになります。つまり、この状況において、移動しているのは落下しているミスター・バイエンスではなく、あなたの方なのです。

ミスター・バイエンスがあなたと同じ位置まで落ちた時、移動しているあなたの時計がミスター・バイエンスと比べてゆっくり進むのは、先ほど説明した通りです。

では、あなたが2階にいる場合と1階にいる場合の違いを考えてみましょう。空気抵抗の影響を無視すれば、あなたから見るとミスター・バイエンスの速度は、2階にいる時より1階にいる時のほうが大きいはずです。しかし、先ほど説明した通り、本来移動しているのはあなたの方です。

移動速度が大きいほど時間の流れがゆっくりになるため、2階より1階の方、つまり地球により近く、重力がより強いほど時間の流れがゆっくりになるのです。移動速度による時間の進み方の違いと同様に、地球程度の重力であれば、ほとんどの場合でこの影響は無視できるほど小さいです。

しかし、極めて高い精度で時間を測定する必要がある場合、一般相対性理論に基づいた補正が必要となります。代表的な例として、人工衛星が挙げられます。

人工衛星が地球を周回する場合、地球に近いほど落下しないように地表に対して速く移動する必要があります。そのため、移動速度の観点では地球に近いほど人工衛星の時計は地表と比べてゆっくりと進みます。さらに、重力の強さという意味でも、地球に近いほど人工衛星の時計はゆっくりと進みます。反対に地球から離れるほど、人工衛星の時計はより速く進むことになります。

例えば、GPS用の衛星は高度およそ2万キロメートルですが、その時計は地表から見て1日ごとに約38マイクロ秒ほど速く進むことが分かっています。これほどまでにズレてしまうと、一般相対性理論に基づく補正なしにはGPSはまともに機能しません。

これ以外にも一般相対性理論が正しいという証拠はいくつも見つかっており、極めて優れた理論であることはもはや疑いようもありません。

相対性理論を超えて:時間旅行の可能性とパラドックス

ここまで相対性理論における時間について説明してきましたが、時間は極めて簡単に変わるものだということが理解できたはずです。では、相対性理論から逸脱してみたらどうなるでしょうか?

例えば、相対性理論においては、質量を持つ物体が光の速度以上にまで加速することを禁止していますが、その壁を破ったら何が起こるのでしょうか?

相対性理論を拡張させた一部の理論では、光の速度を超えると時間が逆行するようになると主張しています。ある計算結果では、10光年離れた地球に対して光速の0.1倍の速度で遠ざかっている惑星に対し、光速の30倍の速度で戻ってくると、およそ4ヶ月前の地球に戻ってくることになるそうです。

これを利用すると、計算上はあなたが生まれる前の地球に降り立つことも可能となります。その時、もしあなたがあなたの両親を殺してしまったら何が起こるでしょうか?あなたは生まれていないことになり、すると両親を殺したあなたは存在しないため、矛盾が生じます。

相対性理論が示した、時間の流れが一様ではないという事実。このように、時間は時に現実とは何かという問いを人類に突きつけてくるのです。あなたは時間とは何だと思いますか?今回の解説はここまで。またお会いしましょう。