Spotifyと謎のフェイクアーティスト:音楽業界を揺るがす闇の調査報告
- 2025-01-12

Spotifyと謎のフェイクアーティスト:音楽業界を揺るがす闇の調査報告
最近、Spotifyの公式プレイリストに大量のフェイクアーティストが潜んでいるという衝撃的な情報が拡散しています。本記事では、その実態を徹底的に調査し、Spotifyの収益システム、フェイクアーティストの手口、そしてその背後に潜む闇を解き明かしていきます。
Spotifyの収益システム:なぜフェイクアーティストが生まれるのか?
Spotifyは世界的に有名な音楽配信サービスです。無料版は広告付きで機能制限がありますが、月額料金を支払うことで広告非表示や高音質再生など、制限が解除されます。多くの人が利用しているこのサービスですが、その収益システムにこそ、フェイクアーティストが生まれる温床が存在するのです。
Spotifyの収益は広告と有料サブスクリプションで得られます。その収益を一旦集計し、Spotifyの手数料として30%を差し引いた残りの70%がアーティストに分配されます。この分配は、楽曲の再生回数に応じて各アーティストに振り分けられます。
SpotifyとYouTubeなどの広告収入モデルの違い
YouTubeを含むAdSenseなどの広告収入モデルは、広告クリック数や視聴回数に基づいて、広告主に報酬が支払われる仕組みです。これに対して、Spotifyの広告はラジオのような音声広告が中心であり、楽曲再生の途中で広告が流れることはありません。
このSpotifyの広告システムの特徴が、フェイクアーティストの増加を招く要因の一つとなっています。 なぜなら、再生回数を増やすだけで収益を上げられるからです。YouTubeでは、視聴者を惹きつけなければ再生回数は伸びません。つまらない動画を延々と流しても、視聴者はすぐに離れてしまい、収益は上がりません。
しかし、Spotifyでは、たとえ低クオリティな楽曲であっても、再生回数が増えればアーティスト側に収益が入ります。無料ユーザーには1時間に6回までしかスキップできないという制限があるため、悪質なプレイリストに巻き込まれたユーザーは、嫌でもその楽曲を聴き続けなければなりません。これは、一種のテロリズムと言えるでしょう。
フェイクアーティストの手口:AIと巧妙な戦略
フェイクアーティストは主に以下の2つの手口を用いて、Spotifyのプレイリストに楽曲を大量に送り込み、不当に利益を得ています。
1. 同一音源の複数登録
一つの音源を異なるアーティスト名、楽曲名で複数登録します。一見、異なる楽曲のように見せかけることで、再生回数を水増しします。記事冒頭のツイートで指摘されていた「Firefly Entertainment AB」という謎のレコードレーベルに所属するアーティストは、この手法を用いている可能性が高いです。
2. AIによる楽曲大量生成
AIを用いて大量に楽曲を生成します。BoomrというAI楽曲生成サービスが使用されている可能性が指摘されており、実際、このサービスを用いて楽曲を生成し、アップロードした際の動画も公開されています。
これらの手法に加え、フェイクアーティストは、Spotifyの公式プレイリストへの採用システムを分析し、再生回数を水増しするための戦略を練っている可能性も高いです。
Spotify公式プレイリストへの潜入:戦略と裏技
フェイクアーティストが、いかにしてSpotifyの公式プレイリストに楽曲を大量に採用させているのか?その方法を解き明かします。
1. アルゴリズムの攻略
Spotifyのプレイリスト採用アルゴリズムを分析し、再生回数などの指標を操作することで、プレイリストへの採用確率を高める戦略です。これは、まるでゲームの攻略法を見つけるような緻密な作業が必要となります。
2. 裏取引の可能性
Spotifyの関係者と裏で手を組み、公式プレイリストに楽曲を組み込んでもらうという、陰謀論的な可能性も考えられます。
低音質音楽とインストゥルメンタルの浸透:Low-Fi Hip Hopへの着目
フェイクアーティストは、特にLow-Fi Hip Hopなどのインストゥルメンタル音楽に集中して楽曲を生成している傾向があります。
なぜLow-Fi Hip Hopなのでしょうか?それは、このジャンルが持つ特徴と、リスナーの視聴スタイルに関係があります。
Low-Fi Hip Hopは、低音質のアナログサウンドを特徴とし、ノイズや歪みを意図的に使用することで、リスナーに暖かみとノスタルジックな感覚を提供します。リラックスしたビートと穏やかなメロディーは、作業中やリラックスしたい時に最適です。
Low-Fi Hip Hopリスナーの特性
Low-Fi Hip Hopを聴く人は、作業中や勉強中にBGMとして流している人が多く、楽曲の内容に意識を集中しない傾向があります。そのため、AIで生成された低クオリティの楽曲であっても、気づかれにくいのです。まさに、フェイクアーティストにとって、格好のターゲットと言えるでしょう。
Firefly Entertainment AB:謎のレコードレーベルの正体
記事冒頭で名前が登場したFirefly Entertainment ABというレコードレーベルについて、より深く掘り下げていきます。このレーベルはスウェーデンに本社を置き、シンガポールにもオフィスを持つ企業であり、大量のフェイクアーティストを抱えているとされています。
スウェーデン系のメディア「Dagens Nyheter」の調査によると、Firefly Entertainment ABとSpotifyには深い繋がりがあることが示唆されています。 具体的な証拠は少ないものの、同社の共同設立者の1人が、Spotifyの共同設立者であるDaniel Ekと個人的な親密な関係にあったことが明らかになっています。
Dagens Nyheterは、Firefly Entertainment ABにインタビューを試みましたが、拒否されています。同社は、Spotifyと通常の契約を結んでいるだけで、プレイリストに影響を与えるようなことはしていないと主張しています。
しかし、Dagens Nyheterの調査では、Firefly Entertainment ABに関連するアーティストがSpotifyで830以上のアーティスト名を使用し、計770万人の月間リスナーを獲得していることが判明しています。これは、スウェーデンのスーパースターであるロビンの2倍以上のリスナー数となります。
さらに、Firefly Entertainment ABに関連するアーティストの楽曲は、特定の音楽ガイドラインの範囲内で制作された楽曲で、偽のアーティスト名でSpotifyに掲載されている可能性も指摘されています。
被害を受けるのは誰か?
フェイクアーティストの活動によって、最も大きな被害を受けるのはアーティスト自身です。特に、これから成長しようとしているインディーアーティストは、公式プレイリストに食い込もうとしても、フェイクアーティストにその座を奪われてしまいます。
当然、収益もフェイクアーティストに奪われてしまうため、音楽活動の継続が困難になる可能性も出てきます。さらに、純粋に音楽を楽しみたいSpotifyリスナーも、フェイクアーティストの楽曲によって音楽体験を損なうことになります。
フェイクアーティストによる収益:驚愕の数字
Music Business Worldwide (MBW)というメディアが、50人のフェイクアーティストのプレイリストを作成し、公開しました。その50人が制作した楽曲の総再生回数は5億回を超え、Spotifyでの再生単価を0.5円と仮定すると、約2億6000万円の収益になります。
Firefly Entertainment ABがSpotifyに830人分のアーティストプロファイルを登録していると仮定し、ざっくりと800人と計算すると、その収益はなんと41億6000万円にも及びます。
これはあくまでざっくりとした計算ですが、Spotifyにおいてフェイクアーティストがどれほどの利益を不正に得ているのかを示す、一つの目安となります。Spotifyの2022年の売上高は約1兆7776億円であることを考えると、数億円規模の不正収入は、Spotifyにとっては大した額ではないように思えますが、音楽業界全体の健全な発展を阻害する大きな問題であることは間違いありません。
まとめ:闇の深さ、そして未来
本記事で取り上げたSpotifyにおけるフェイクアーティスト問題は、AI技術の発展と音楽配信サービスの収益システムの脆弱性という、複雑な問題が絡み合っています。
単純にAIで大量に楽曲を生成しているだけではない、Spotifyと裏で手を組んでいる企業が存在する可能性も示唆されており、その闇の深さは計り知れません。この問題の解決には、Spotify側の更なる対策強化、そして、音楽業界全体の不正行為に対する意識改革が不可欠と言えるでしょう。今後の動向に注目が必要です。