無限の可能性と絶望の狭間で…「バベルの図書館」を徹底解剖!
- 2024-12-28
無限の可能性と絶望の狭間で…「バベルの図書館」を徹底解剖!
「バベルの図書館」をご存知だろうか? ホルヘ・ルイス・ボルヘスの同名短編小説をモチーフにした、謎めいたウェブサイト、そしてMinecraftの世界にまで再現された、文字通り「万物を映す」驚異的な空間だ。この動画では、その驚異的な構造と、そこに潜む無限の可能性、そして避けられない絶望について深く探っていく。
バベルの図書館:その驚異的な構造
バベルの図書館は、膨大な量の情報を収蔵する仮想空間だ。ウェブサイト版では、大きく分けて2つのアーカイブが存在する。
- テキストアーカイブ: 文字のみで構成された文章記録。
- 画像アーカイブ: 640 x 416ピクセルの画像記録。
特に画像アーカイブは視覚的に分かりやすく、4096色のうちいずれかの色が各ピクセルに割り当てられている。 しかし、その組み合わせの数は一体どれほどになるのだろうか?
単純に考えると、4096色 × 416ピクセル × 640ピクセル = 109,519,400通りとなるかもしれない。しかし、実際にはそれは4096(416×640) 通りとなる。この数字は、想像をはるかに超える途方もない数であり、10の96万1755乗という途方もない桁数になる。
これは、もはや人間が理解できる範囲を遥かに超えた、無限に近い有限の世界と言えるだろう。この膨大な数の組み合わせの中には、
- 明日の日経平均株価
- 10年後の天気
- 100万年後の技術
- 来年のアニメのセル画
- 3000年前の猫の写真(カメラが存在しなかった時代にも関わらず!)
- 古代アレクサンドリア図書館でレスラーが熱い抱擁を交わしている様子
といった、過去、現在、未来、そしてありとあらゆる可能性を含んでいるとされる。まさに「万物を映す」にふさわしい、驚異的な空間なのである。
未来予知は可能か?計算してみよう
動画では、全人類にスマホを配布し、毎日8時間バベルの図書館の画像アーカイブを観察させることで、未来を予知できる画像を発見できる確率を計算するという、壮大な(そして、現実的には不可能な)試みが提案されている。
まず、1枚の画像が未来の1秒間を表すと仮定する。人類の存続期間を100万年間と仮定すると、必要な画像枚数は約31,536,000,000,000,000,000枚となる。
この数字を画像アーカイブの総組み合わせ数で割ることで、未来予知の成功確率を計算できる。しかし、その確率は、0.の後に96,017,741個の0が続く、限りなく0に近い値になる。
これは、事実上不可能であることを意味する。
バベルの図書館Minecraft版:現実世界の縮図
ウェブサイト版に加えて、Minecraft版のバベルの図書館も存在する。こちらは1ページ40行、各行80文字で構成され、26個の英字、スペース、カンマ、ピリオドがランダムに使用されている。
Minecraft版では、1冊16ページ構成で、シェルフに収納されている本を一つ一つ取り出して読むことができる。組み合わせの総数はウェブサイト版と比較すると圧倒的に少ないものの、それでも100冊以上の本が存在し、ワールドデータの容量はなんと400ペタバイトにも及ぶ。
このMinecraft版バベルの図書館は、巨大なデータセットを視覚的に表現することで、ウェブサイト版が持つ無限の可能性をより身近に感じさせてくれる、興味深い試みと言えるだろう。
バベルの図書館の住人たち:希望と絶望の狭間で生きる者たち
動画では、バベルの図書館に住む人々の様子も紹介されている。彼らは図書館員として、意味不明な文字列で構成された本を徹底的に調査し続ける。
- ある図書館員は、意味のない文字列が繰り返される本を発見し、その異常性こそが価値だと主張する。これは、無限のランダムな情報の中にこそ、稀有な意味を見出すことの重要性を示唆していると言える。
- 他の図書館員は、本を積み重ねて椅子代わりにしたり、本を解体してクッションを作ったりするなど、独特な生活様式を送っている。これは、無限の情報に圧倒されながらも、自分なりの生き方を見出そうとする人間の姿を反映していると言える。
- また、絶望に暮れ、図書館を信じられなくなった図書館員は、自らランダムな本を書いて隠しもつなど、異様な行動に出る者もいる。
これらの図書館員の姿は、無限の可能性の中に存在する、人間の脆さと強さを浮き彫りにしている。彼らは希望と絶望の狭間で、自分自身と向き合いながら生きているのだ。
バベルの図書館とソートアルゴリズム:ボゴソートの哲学
動画の後半では、バベルの図書館とソートアルゴリズムとの関連性が語られている。
特に、「ボゴソート」という、極めて非効率的なソートアルゴリズムが注目される。ボゴソートは、ランダムにシャッフルを繰り返し、偶然ソートが完了した時に終了するアルゴリズムである。
このボゴソートこそが、バベルの図書館をさまよう行為、つまり意味のない情報を探し続ける行為を象徴していると言える。一見無意味な行為に見えるが、もしも運が良ければ、効率的なアルゴリズムよりも早く目的の情報を見つけることができる可能性がある。
これは、バベルの図書館という無限の情報空間において、効率性よりも偶然性、そして運の要素が重要となることを示唆している。
バベルの図書館:終わりなき探求のメタファー
結局、バベルの図書館とは何か? 動画は、明確な答えを与えてはくれない。しかし、それは、この空間が持つ無限の可能性と絶望の狭間、そして人間存在そのもののメタファーであることを示唆している。
明日株価を知ること、未来を予知することは、ほぼ不可能だろう。しかし、それこそがバベルの図書館の真髄なのかもしれない。
無限に限りなく近い有限の世界。 そこに存在する「意味」とは何か。 「価値」とは何か。 バベルの図書館は、これらの問いかけを私たちに突きつけてくる、終わりなき探求のメタファーなのである。 そして、私たち自身もまた、その図書館を彷徨う図書館員なのかもしれない。 この動画が、あなた自身のバベルの図書館探求のきっかけになれば幸いだ。