仮想通貨の税務申告はもう迷わない!損益計算の3つの方法と注意点
- 2024-12-22
仮想通貨の税務申告はもう迷わない!損益計算の3つの方法と注意点
年末が近づき、仮想通貨投資家の皆様にとって最も気になる話題といえば、税務申告です。 特に「仮想通貨の損益計算がわからない!」というお悩みは非常に多く寄せられています。 本記事では、仮想通貨取引における損益計算を分かりやすく解説します。確定申告に必要な損益計算がなぜ難しいのか、そして、その計算方法を3つのアプローチと共に、それぞれのメリット・デメリットを詳しく説明していきます。
確定申告には損益計算が必須!
仮想通貨で一定以上の利益が出た場合、確定申告が必要になります。 これは、通常の会社員、個人事業主、フリーランス、主婦、大学生など、全ての仮想通貨投資家に適用されます。
- 会社員の場合: 年間20万円以上の利益
- 個人事業主・フリーランスの場合: 本業の収入と合わせて年間48万円以上の利益
- 主婦・大学生の場合: その他の収入と合わせて年間48万円以上の利益
上記に該当する方は、確定申告を行う必要があります。 しかし、確定申告を行うには、まず仮想通貨による利益を正確に計算する必要があります。これが、多くの投資家にとって難しい点です。この利益の算定を「損益計算」と呼びます。
そのため、まずは仮想通貨の損益計算を行い、自分がどれだけの利益を出しているかを算定する必要があります。そして、その利益の金額が、上記の基準を満たしていれば、確定申告を行う必要があります。
仮想通貨の損益計算が難しい3つの理由
仮想通貨の損益計算が難しい理由は、主に以下の3点に集約されます。
1. 仮想通貨取引形態の複雑さ
通常の仮想通貨取引は、売買だけではありません。仮想通貨同士の交換、ステーキング報酬、レンディング報酬など、様々な取引形態が存在します。さらに近年では、暗号資産担保ローンなども増加しており、取引形態は日々複雑化しています。 NFTの売買やレベルアップなど、さらに複雑な要素も加わってきます。
これらの取引を一つ一つ税法に当てはめて利益になるか否かを計算することは、非常に困難です。
2. 取引所の取引履歴取得の困難さ
利用している取引所によっては、過去の取引履歴が取得できない、もしくは取得できる期間が限られている場合があります。
- 例:1年間分の取引履歴は取得できるが、それ以前の履歴は取得できない。
- 例:3年以上前の取引履歴は取得できない。
仮想通貨の損益計算を行うには、投資開始年度からの全ての取引履歴が必要ですが、取引所が勝手に取引履歴の取得を制限してしまうことがあるのです。 さらに、最悪の場合、取引所が倒産してしまうリスクも存在します。(FTXのようなケース) 倒産した場合、取引履歴を取得することができなくなり、損益計算が不可能になります。
このような取引所の都合で、損益計算に必要な取引履歴が取得できないという事態が起こりうる点が、大きな問題です。
3. DeFi取引の分析困難さ
DeFi(分散型金融)取引では、メタマスクなどのウォレットを作成し、自分で取引を行うため、通常の仮想通貨取引所と同様に取引履歴をしっかり分析して損益計算を行う必要があります。
しかし、DeFiでは日々新しいプラットフォームが生まれており、それらのプラットフォームに対応した損益計算ツールは限られています。 例えば、Solanaチェーンなどは分析が非常に困難なチェーンの一つです。多くの損益計算ツールがSolanaに対応していないため、手動で分析する必要があり、これが大きな負担となります。
仮想通貨損益計算の3つの方法
それでは、実際に仮想通貨の損益計算をどのように行うのか、3つの方法を説明します。
方法1:原則的に計算する
この方法は、全てのトランザクション(取引履歴)を一つ一つ分析し、計算する方法です。
ポイント:
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損益計算ツールを活用する
- CryptoTax、CoinTracking、Taxbitなどのツールが存在します。
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5つのステップで計算する
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ステップ1:取引履歴の取り込み 全ての取引所(投資開始年度から現在まで)の取引履歴を損益計算ツールに取り込んでください。
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ステップ2:DeFi取引履歴の取り込み メタマスクなどのウォレットの取引履歴も、同様に損益計算ツールに取り込んでください。ツールが対応していないチェーンの場合は、別途取引履歴を抽出し、標準フォーマットに当てはめてからツールに取り込みます。
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ステップ3:エラーの解消 損益計算ツールでは、コインの枚数が計算上マイナスになるなどのエラーが発生することがあります。これらのエラーを全て解消してください。
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ステップ4:枚数確認 損益計算ツール上の枚数と、実際に保有している枚数を比較・分析します。この作業は非常に重要です。ツール上で5枚保有していると表示されているのに、実際には4枚しか保有していないというケースがあります。このずれを調査することで、取引履歴の漏れや分析ミスを発見できます。
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ステップ5:体感損益との比較 損益計算ツールによる損益と、自身の体感による損益を比較します。 例えば、ビットコインでツール上は1000万円の利益と表示されているのに、体感では300万円程度しか利益が出ていないというケースがあります。 このようなずれを検証することで、ツールへの入力ミスや分析ミスを発見することができます。
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メリット: 最も正確な計算結果が得られる可能性が高い。
デメリット: 非常に時間と労力がかかる。取引所の履歴取得の困難さやDeFi取引の複雑さによって対応できない場合がある。
方法2:年末に全利確する
この方法は、12月31日までに全ての仮想通貨を売却し、日本円に換金して計算する方法です。
計算式: 年末時点の日本円総額 - 投資総額
投資総額の算定:
- 今年から仮想通貨投資を始めた場合:今年の仮想通貨取引への投資額の合計
- 昨年以前から仮想通貨投資を行っている場合:
- 前年度末に全利確済みの場合:年始時点の日本円総額
- 前年度末に全利確していない場合:年始時点の仮想通貨の日本円換算額の合計
ポイント: 投資総額は、あくまで日本円換算額の合計です。自己評価によるものではなく、実際に購入時に支払った金額を指します。
メリット: 計算が簡単。
デメリット:
- 年始時点でのコインの取得価格の分析が必要になる場合がある。
- 全利確していない取引所が存在すると脱税になる可能性がある。 全ての取引所から仮想通貨を完全に引き出して、日本円に換金している必要がある。
方法3:売却額の95%を利益とする
この方法は、国税庁の発表に基づき、売却額の95%を利益として計算する方法です。国税庁のHPに公開されている「暗号資産の計算書」で参照できます。ただし、この方法は、国内取引所での単純な売買のみで、その他の複雑な取引形態には適用できないという制限があります。
計算式: 売却額 × 95%
国税庁の発表(抜粋):
なお、売却した暗号資産の取得価額については、売却価額の5%相当額とする事が認められます。例えば、ある暗号資産を500万円で売却した場合において、その暗号資産の取得価額を売却価額の5%相当額である25万円とする事が認められています。
メリット: 計算が非常に簡単。
デメリット: 税金が高くなる。
まとめ
- 仮想通貨で利益が出た場合は、確定申告が必要となる。
- 仮想通貨の損益計算は、取引形態の複雑さ、取引履歴の取得困難さ、DeFi取引の分析困難さなどから非常に難しい。
- 損益計算には、(1)原則的に計算、(2)年末に全利確、(3)売却額の95%を利益とする、の3つの方法がある。
- どの方法にもメリットとデメリットがあり、自身の投資スタイルに合わせて選択する必要がある。
損益計算に困っている方は、税理士への相談も有効です。 本記事の情報はあくまで一般的な情報であり、税務に関する最終的な判断は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。