豪華客船「カーニバル・トライアンフ号」の悪夢クルーズ:トイレが使えなくなる惨劇と、その後…

豪華客船「カーニバル・トライアンフ号」の悪夢クルーズ:トイレが使えなくなる惨劇と、その後…

豪華客船「カーニバル・トライアンフ号」の悪夢クルーズ:想像を絶する惨劇と、その後の展開

「クルーズ旅行で最悪の事態」と聞いて、何を思い浮かべますか? 座礁?遭難?沈没? まさか、それらに並ぶ形でトイレが使えなくなることなど、誰も想像もしないでしょう。しかし、豪華客船「カーニバル・トライアンフ号」に乗船していた3000人以上の乗客にとって、それは現実のものとなってしまったのです。

この記事では、2013年2月、メキシコ湾で発生したカーニバル・トライアンフ号の火災事故とその後の驚くべき展開を詳細に解説します。想像を絶する事態の数々を、生き残った乗客の証言を交えながら、克明に紐解いていきましょう。

豪華客船「カーニバル・トライアンフ号」とは?

カーニバル・トライアンフ号は、カーニバル・クルーズライン社が誇る大型クルーズ船でした。その大きさは圧巻!全長270m、13階建ての船体は、サッカーコート3面分に相当する広大な面積を誇っていました。4つのプール、7つのジャグジー、そして巨大なカジノ施設も完備されており、乗客に特別なバケーションを提供できる存在だったのです。

想像してみてください。広大な船内で数日も楽しめる、まさに夢のような豪華な空間。本来ならば、このクルーズ旅行は乗客にとって楽しい思い出として刻まれるはずでした。しかし、今回の事故以来、人々がこの船の名前を聞いて思い出すものは、楽しい思い出とはかけ離れたものとなってしまいました。一体何が起きたのでしょうか?

事故発生:悪夢の始まり

2013年2月、カーニバル・トライアンフ号は、アメリカのテキサス州ガルベストンからメキシコ湾へ向けて4日間の旅を開始しました。好天に恵まれた船内では、多くの乗客が夜遅くまで行われた盛大なパーティーで日々を満喫。様々なエンターテイメントや豪華なビュッフェなどが、彼らの船旅を彩っていました。

しかし、このクルーズ旅行の目玉は、スキューバダイビングなどで有名なメキシコの島コスメルでの観光でした。乗客たちは昼間は美しい海で遊んだり、ショッピングを楽しんだり。夜は船に戻り、まるで祭り騒ぎをするかのように船内でのエンターテイメントを楽しむ予定でした。

突如として響き渡った警告:そして始まるパニック

ところが、コスメルからガルベストンへ戻る途中の2月10日、午後5時半頃、多くの乗客が眠りに就いている中、突如として船内から「アルファチーム、アルファチーム…」という無機質な警告音が響き渡ったのです。「アルファチーム」とは、カーニバル社の船が乗組員たちに火災などの緊急事態が発生したことを伝えるコードでした。

この警告を聞いて飛び起きた乗客たちは、たちまち恐怖に支配されていきました。突然、そんな音が鳴ったら、誰でも何かが起きたと察知するでしょう。そして、このような事態が起きたならば、乗客たちが不安を拭うために状況を把握しようとするのは当然のことです。

1、2階の乗客たちが部屋のドアを開けると、そこには真っ白な煙が立ち込めていました。この様子を見た乗客は瞬く間にパニックに陥り、早朝にもかかわらずライフジャケットを片手に家族や友人を探すべく、船内をかけ回ったのです。

そして、彼らが甲板に出ると、なんと最上階に設置された煙突から黒煙が立ち上っていたのです。乗客たちは「アルファチーム」の警告音が鳴り続けていたため、すぐに避難場所へ向かおうとしていました。しかし、乗組員や船内放送から詳細な情報や指示がなかったため、時間が経つにつれて不安と混乱はどんどん増していきました。

一応放送で「落ち着いて行動するように」というアナウンスはあったものの、火災の規模やそれによる影響などの情報は一切なかったため、乗客は自分がどれくらい安全なのか分からなかったのです。把握できないものほど怖いものはないのです。

そして少し時間が経過してようやく、「エンジンルームにて非常事態が発生しましたが、現在は収束に向かっています。ですので、避難場所に行く必要はありません。部屋にお戻りください。」と火災の状況と次の指示が伝えられました。

停電と増幅する恐怖:そして赤い袋

なんとか問題はなさそうだ…そう思ったのも束の間、この放送の直後に船の照明がちらつき始め、突如として船内は真っ暗になりました。船の中は緊急用の最低限の明かりだけが灯っている状態です。

そして、火災発生から30分が経過した午後6時頃、「自動消火装置によって火災は鎮火した」と放送があり、船内にようやく一時的な安堵の瞬間が訪れたのです。「一時的」という言葉が意味深すぎます。

レーダーの予想通り、なんとこの後、乗客たちにある絶望が襲いかかることになります。火災の影響で船の電力が失われたため、動力システムも動かなくなってしまいました。3143人の乗客と約1100人のスタッフたちは、メキシコ湾に立ち往生することになったのです。

どうするのか?しかし、解決策がないわけではありませんでした。2隻のタグボートがカーニバル・トライアンフ号を曳航すべく出発していたのです。そのため、乗組員からは「後日の水曜日にメキシコのプログレソ港に到着できます」と伝えられ、乗客たちは安堵し、身に着けていたライフジャケットを脱ぎ始めました。よかった。

だが、この時彼らは思いもしなかったであろう、再び陸地にたどり着くまでに要する時間は5日だけでは済まされないことなど。でも、まあ電気が使えないのは不便だけど、これだけの大型船なら最低限の生活は問題ないでしょ?

乗客たちもまさにそのような楽観的に考えていたようですが、状況はそれほど単純なことではないと気づくのに時間はかかりませんでした。乗客たちは火災後すぐに、さらなる異変を発見したのです。

何が?事故発生日の日中には電力が失われていたため、空調や給水システム、エレベーターなどの設備はもちろんのこと、排水機能までが停止している状態だったというのです。排水って?もし用を足した時はどうすればいいの?真っ先にそれが頭をよぎるよな。

だが、この疑問を解決する1本のアナウンスが船内をかけめぐり、それを聞いた乗客たちの表情はたちまち青ざめていきました。その放送は、クルーズディレクターからで、「皆様にバイオハザードバッグ、つまり赤い袋を配布いたしますので、大きい用であればそちらに済ませていただき、廊下にあるゴミ箱に捨ててください。また小さい方の場合はシャワールームの中で済ませてください」とのことだったのです。

つまり大きい場合はその袋に入れて、小さい方はシャワールームの排水溝に流してってこと?この放送があった時点で船内のトイレは水の流れがなくなっており、これはやむを得ない選択だったのでしょう。しかし当然、この赤い排泄袋は乗客たちに大きな衝撃を与えたのは言うまでもありません。

この様な事態にあまりのショックを受けたある乗客は「みんなが赤い袋に入れてそれを廊下に投げ捨てていました。本当にショックで、私は絶対にこんな袋は使いたくないと思いました」と、後のインタビューで語りました。最悪な状況だけど、まだトイレが逆流していないだけマシなのかも?そうだったらよかったのだけどな。

船体の傾斜とトイレの逆流

まさか!実はこの時、カーニバル・トライアンフ号は、火災によってスタビライザー(船が安定して航行できるようする装置)も損傷していました。そのため、船は波風に揺られて大きく傾いており、乗客たちは壁にしがみ付かでもしなければまともに立つことも困難なほどだったのです。

と言うことはさっきの話と合わせると最悪な展開が予想できるんだけど。そう、排水システムの故障とこの揺れによって、使用済みの水や排泄物がトイレからあふれ出し、さらに廊下へ流れ出てしまったそれらは、船が揺れるたびに壁や床をどんどん汚染していきました。それだけでなく、赤い袋に捨てられていたものも飛び出してしまい、廊下一面はより深刻な状況になったり、客室内の排水口の位置によっては逆流が止まらず、客室内に溢れ、部屋のカーペットにしみ込んでいったというのです。衛生面が最悪すぎる結果に。

こんな状態で後2日もどこで寝ればいいっていうの?悪臭と室温上昇のため、乗客たちが客室に居続けることすら困難でした。そこで彼らはマットレスを部屋の外のデッキへ移動させ、少しでもこの悪夢のような状況から逃れようとしました。

助け船と更なる衝撃

豪華客船の旅のはずが。なお、この間にはメディアもすぐ反応し、現場の状況をカメラにおさめるべく、船の上空には何台ものヘリコプターが飛んでいたという。そして間もなくしてニュース番組では、甲板にシーツやタオルやバスローブを用いて仮設ベッドが作り出される光景が映し出される。これが後に有名になる「テント村」だった。

ひどいでしょう。こうして乗客たちは電気も空調もなければ食事や水も少ない、さらにトイレは機能しないという不衛生な船の上での時間を過ごすことになり、次第にその不満は爆発寸前までつのっていったのです。逆にこの状況で問題ないと言う人がいたら、それはそれでヤバイ。

この状況をなんとかしなければならないと思ったカーニバル社は、ある大胆な打開策を打ち出すことに。しかし、これがさらにひどい状況を招くなど、乗組員たちはまだこの時知るよしもありませんでした。一体何を?それはなんと、無料でビールとワインを提供するオープンバーを開催することだったのです。

もうお酒でも飲んでないとやってられないって人もいそうだし、別にいいアイディアなんじゃないの?確かに一時的にストレス解消になるかもしれないが、結果的にはこの策は逆に状況を悪化させることになります。

このサービスは日曜日の午後から始まったのですが、まず乗客の何人かがひどく酔っぱらって騒ぎ始め、さらに海に物を投げたり、既に汚れているトイレをさらに汚したりしてしまいました。しかもよく考えたらお酒を飲むならトイレも近くなるし散々だったってことか。

なんとか救助までの間、乗客の人たちに少しでも気分よく過ごしてもらおうとしたんだろうけどね。だろうな。なんと言っても楽しいはずの船旅が「おぶつくクルーズ」という地獄の旅になり果てたのだから。

救助とその後:終わらない悪夢

そういえば曳航のためのタグボートはいつになったら到着するんだろう?2隻は事故発生から2日後の水曜日の朝、ついにカーニバル・トライアンフ号の元へ到着。しかし乗客がほっとしたこのタイミングで、またもや衝撃の事実が判明したぞ。次は何?と言うのも、クルーズ船はこの2日間で北に約145キロも流されてしまっていて、もともと計画されていたメキシコのプログレソ港から遠く離れてしまっていたのだ。

天国からの地獄パターン。そのため、この重量のある船をアメリカのモービル港まで曳航することになったぞ。ちなみにそこまではあとどれくらいかかるの?予定されていた日数を最低でも2日延長する必要があった。シーテー話題といえばアメリカに寄港することで、パスポートを持っていない900名の乗客は入国が容易になる点だ。

もともとメキシコに行く予定だったのに。それについてはアメリカ独自の制度と、この旅がクローズドループクルーズであることが関係している。このクローズドループクルーズでは、アメリカの港から外国を経由して再びアメリカへ戻る場合、パスポートがなくても身分証明書があれば簡略的な入国手続きができるようになっているのだ。そんな制度があるんだ。

とはいっても、さらにここから延長となると健康被害も出てきそう。まさにその通りで、ある乗客の命が危険にさらされることになってしまったんだ。どんな状況に?乗客の中には息子と孫に招待してもらって、4人でこのクルーズに参加していたある夫婦がいたのだが旦那さんは足が不自由かつ糖尿病を抱えており、さらに奥さんはパーキンソン病を患っていたのだ。

しかし楽しかったのは火災が起きるまでの2日間だけで、それからは十分な水がないため薬を服用できないばかりか、船が大きく傾いたり滑る階段を使わなければならなかったため、足が悪い旦那さんは転倒してしまっていたという。せっかくのプレゼントが。

だが、この夫婦以上に危機的な女性客がいた。彼女は投薬が必要な状態だったため、この長引く2日間という時間が命に関わってしまうんた。でも船は自力では動けないし、一体どうするの?そこで究極、沿岸警備隊が出動し、彼女は先にクルーズ船から救助された2名の中の1名になった。

なお、この女性は「船を降りる時、私はロープに縛られた状態で内心とても不安に思っていました。でも沿岸警備隊の人たちが『心配しないで、私たちが支えますから』と言ってくれたのです。そして私は先にコスメルに送ってもらうことになり、水曜日に投薬を受けることができました」と後のインタビューで語っている。無事だったんだね。あれ?でも確か先に船を降りたのは2名って?

詳細は不明だが、ある乗客の疾病が悪化し、緊急であると判断され別の船へ移送されたという。でもこの2名の方々以外はまだまだこの試練が続いてたってことだよね。そうだ。ただ身体的に重大な影響が無くとも、精神的に大きなダメージを負った人も多く、その原因はやはりトイレが使えないことだった。

実際に、ある乗客は「一番の問題はトイレが使えないことでした。あの赤い袋だけが唯一の排泄手段だったのです」と、あの悪臭といろんなものが混ざった床の惨状が未だに鮮明に記憶に残っていると語っているという。さらに時間が経過するにつれて、食料も底付き始めてしまった。

そのため乗客たちは冷たい玉ねぎとキュウリが挟まったサンドイッチのために列を作って何時間も待つような状態だったという。3000人以上に配るってなるとね。しかも食料をめぐる喧嘩も勃発しており、ある乗客はこの光景を見て「ハンガーゲームさながらでした」と語った。食べ物を運んで来てくれる船はなかったのかな?

実はこの時カーニバル社はエレション号、コンクエースト号、レジェンド号で物資を届けに行っていたのだが、毎秒18m以上の強風と高さ約2mにも達する荒れた海がこれらの支援船の到着を遅らせることになってしまったのだ。となればもういち早く港に着くのを祈るしかないって感じか。

だがここでまたしても乗客たちを絶望へと叩き落とす事態が起きてしまったぞ。次は一体何なの?それは曳航していたタグボートの件だ。と言うのも、カーニバル・トライアンフ号の巨大な船体に対し、明らかにこの2隻のボートでは力不足は否めず、船を引っ張って進む速度はわずかに時速8キロだった。

仕方ないとは言え、冗談レベルだと考えるとさらに、これだけの重量のものを引っ張る中で何度も牽引用のロープが切れてしまい、一体いつになったら港に着くのか、本当に予定している日数で到着するのか怪しい状態だったぞ。なおこの船の様子を24時間体制で報道していたニュースメディアは、カーニバル・トライアンフ号の前途多難な旅路を「ペトリ皿」と呼んだ。

ペトリ皿って細菌とかを培養するための容器だよね。確かに衛生面はかなり悪い状態だったと思うけど、「テント村」に続いて乗客の方々が聞いたら気分が悪くなるであろう比喩表現だな。その「テント村」、つまり甲板に持ち出した寝床は火災発生から3日後、物資や機材を積んだヘリコプターの着陸場所を確保するため解体されることになったぞ。

ついに食料が。また機材は主に発電機のことで、これが到着したことにより、乗客たちには暖かい食事を食べられるという希望が生まれた。さらにこの頃になると乗組員たちの緊急対応の甲斐もあって船内の一部機能が回復し始めており、乗客たちは外部との連絡を取ったり情報を得るためこぞって携帯電話を充電したという。

そうか。充電が切れてご家族や友人と連絡が取れていない人も多くいたのか。ああ。ただその電力などはまだまだ心もとなく、実際に、ある女性は「みんな船を壊してしまうんじゃないかというくらいの勢いでこぞって充電をしていたため45時間かけてようやく携帯が少しだけ充電でき、家族と連絡できるチャンスが訪れたのです。ただ唯一電波が入ったのは他のクルーズ船が近くを通った時だけでした」と後日、当時の状況を振り返ったぞ。

また、一方モービル港では乗客のことを心配する家族や友だちが到着するのを待ちわびており、船に乗っていた娘から連絡を受けた母親は「娘が本当に最悪な状態と言っていました。船を降りたら精神的に休まないと無理だと思う」と伝えられたという。それだけ過酷な状況だったってことだよね。

ちなみに最終的にいつ港に到着したの?カーニバル・トライアンフ号が港の存在を確認したのは、追加のタグボートが合流してから2日後の16時頃。ただこの船はモービル港に寄港した中で史上最大のクルーズ船ということもあり、慎重な操船が必要で、完全に港に入るまでに6時間もの時間がかかったぞ。

と言うことは22時ってことか。乗客の方々は地面が待ち遠しくて仕方なかっただろうね。しかし下船した後にも乗客には更なる問題が待ち受けていたんだ。これ以上はもうない?

港ではカーニバル社のCEOであるエイが待っていた。彼は困難な状況にありながらも、少しでも乗客が快適に過ごせるよう尽力した乗組員たちを称えると同時に「船内の状況が非常に悪かったこと、そして皆様にそれをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。我々は最高の休暇を提供することを目的としておりますが、今回は大きく異なる結果を招いてしまいました」と、その場にいた全員に謝罪をしたぞ。

CEO自らちゃんと出てきて謝罪したんだね。となれば船を降りた後の問題っていうのは一体何?それはクルーズ旅行チケットの裏に「船の故障などにより予定された航海ができない場合、カーニバル社はその航海をキャンセルすることができ、事前に支払っていただいた料金の返済義務を負いません」という明記がされていたことだ。

クルーズ旅行なんてめちゃくちゃ高いだろうし、それは確かに大問題。ただこれに対しエイは乗客全員に500ドルと帰りの飛行機代、船内で使用した費用を含めたクルーズ代の全額返金、さらに次回のクルーズ旅行の無料チケットを提供した。おお、これはなかなか無い展開では?

と、私達のように実際にこの地獄のような船旅を経験していない人から見ればそう思えるのだろうが、陸に着いてから数時間も経たないうちに多くの乗客がエイに対して訴訟を起こしたのだ。さすがに怒りが収まらなかったか。

ただ現実は乗客が賠償を求めても、実際に何かしら身体的な不具合などをしていなければ、賠償金を受け取れる可能性は低かった。そのため最終的にカーニバル社が支払った賠償金額は、病院などの医療費が発生した27名の乗客に対して合計11万8500ドルだったそうだ。1500万円以上か。

とはいへひとまず解決ってところだよね。と言いたいところなのだが、カーニバル・トライアンフ号の悪夢はまだ終わらなかった。え?と言うのも、モービル港で修理のため停泊している最中、突然ロープが切れ、モービル港を漂い始め、川底の堆積物を除去する浚渫船と衝突してしまったのだ。

しかもこの結果として、あるタグボートがクルーズ船と浚渫船の間に挟まれてしまい、タグボートに乗っていた1名が命を落とし、もう1名が負傷してしまった。まさかボートの人が亡くなるとは。

そういえばだけど、そもそもなんでカーニバル・トライアンフ号で火災が発生したの?そこには誠実な対応をしたように見えたカーニバル社には、ある問題が隠されていたのだ。一体何が?カーニバル社は今回の事故原因について「エンジンルームで燃料漏れが起こり、それが火災を引き起こしました」と主張したのだが、大衆はこの事故の背景には瑕疵があると感じていた。

なんで?と言うのも、実はこの会社のグループではここ2年間の間に燃料供給用のホースや配管といった、不具合燃料ラインに関する燃料漏れ事故が9件も発生していたのだ。2、3ヶ月に一度のペースだね。

ああ。そのため今回の事故発生の約1ヶ月前になる2013年1月、会社側はディーゼルエンジンに不具合燃料ラインを使用している場合、全ての船においてスプレーシールドを設置するよう指示したぞ。何それ?

スプレーシールドは燃料が漏れた際、エンジンルーム内でその燃料が飛散しないよう保護するものだ。つまり火災発生時の安全対策をしろってことだね。そうだ。そしてこの設置期限を2ヶ月後の3月に設定していたのだが、カーニバル・トライアンフ号は事故発生の2月時点でまだシールドは取り付けられていなかった。

でもそれなら設置期間中に起きた不運な事故だったってことじゃないの?実はそうではない。と言うのも、事故調査をした結果、この船には元からシールドを設置する予定がなかったのだ。は?この理由は、火災の原因となった燃料ホースがエンジンルームの床下に配置されていたことから、この床自体がシールドの代わりとなって燃料飛散や引火を防ぐ役割をすると考えていたためだった。

なるほど。でも結果としてそれでは不十分だったってことか。だがこれ以外にもカーニバル・トライアンフ号はもう一つの問題を抱えており、それが世間に明るみに出たことによりカーニバル社は「火災の可能性を知っていたはずだ」と責任追及されることになる。危険性を把握していたって?

そうだ。もちろん直接的な火災の原因は先ほど伝えたようにシールド問題なのだが、実は会社は今回の船の発電機がメンテナンスの時期を迎えているにも関わらず、それを疎かにした状態で出航してしまっていたのだ。確かにそれが知られちゃったら、非難の的になるのは仕方ないかもな。

なお、今回の事故を受けカーニバル社は1億1500万ドルを投じて船を清掃修理。さらに再発防止のために新しい対策を講じ、4ヶ月後にカーニバル・トライアンフ号の運航を再開した。さらに2019年には2億ドルをかけた大規模改修も実施され、「セーリング・サンライズ」と改名して今でも豪華な船の旅を提供している。

もうあの赤い袋やハンガーゲームのようなサバイバル体験が二度と起きないことを祈るばかりだよ。さて今日はこの辺で終了しようと思う。ご視聴ありがとうございました。