金利と債券価格の関係:教科書では学べない真実と投資戦略
- 2025-01-01
金利と債券価格の関係:教科書では学べない真実と投資戦略
皆さん、こんにちは。元証券マン、現投資アドバイザーのユウです。今日は債券の話、それも少し辛口ですが、個人投資家なら最低限理解しておいてほしい内容です。「債券に興味がない」という方も、いずれ必要になる知識だと思いますので、お聞きくだされば幸いです。本日もよろしくお願いいたします。
教科書通りの関係は本当に正しいのか?
今日のメインテーマは**「債券価格と金利の関係」**です。
投資の教科書では、一般的に「金利が上がると価格は下がり、金利が下がると価格は上がる」と記載されています。
では、なぜそうなるのでしょうか?実は、ものすごく簡単に説明できます。これから皆さんにお伝えしていきます。
まず、教科書に書かれている内容が本当にそうなのかを確認していきます。
左側はアメリカの10年国債利回り、右側はETFのTLT(20年を超える米国国債)です。
ぱっと見てわかると思いますが、利回りの低下と同時に価格は上昇しています。
では、これは社債にも当てはまるのでしょうか?次のページで確認していきます。
米国国債と社債の価格変動:教科書通りの動きを確認
こちらは、アメリカの10年国債利回り(米国債)とアップルの社債価格を比較したグラフです。
アップルの社債は種類が多いので、その中から一つピックアップして掲載しました。
皆様にご覧いただきたいのは、緑で囲んだ部分です。これは2016年1年間を示しています。
この1年間、アメリカの10年国債利回りは下がって、そして上がっています。
では、社債価格はというと?上がって、そして下がっています。つまり、教科書通りに動いていることがわかります。
次にご覧いただくのは、青で囲んだ部分です。これは2019年1月から2020年4月までの期間を示しています。
この1年と少しの間、利回りは下がる一方でした。ということは、価格は上がる一方だったということです。
つまり、国債の利回りが下がると、国債価格も上がり、社債価格も上がるということが、このページと前のページからわかります。
金利上昇時の債券価格と金利の関係
このページでは、金利上昇時における債券価格と金利の関係について解説します。重要なページですので、ゆっくりお話していきます。
Aという債券が発行されました。発行価格は100、利率は3%、残存年数は2年間です。
この債券が発行されたちょうど1年後、市場金利が4%に上昇したと仮定します。
4%に上昇した後、新しい債券Bが発行されました。条件は、発行価格100に対して利率は4%、残存年数は1年間と仮定します。
ここで皆さんへの質問です。
Aという債券、Bという債券、発行体は同じ、財務状況も同じ、格付けも同じ、通貨も同じ、違うのは利率だけだった場合、どちらの債券を購入したいと思いますか?
当然、利率の高い4%のBの債券を購入したいと思うはずです。
しかし仮に、この債券の条件が成立してしまうと、債券市場がパニックに陥ります。
なぜなら、昔発行した債券が全く売れなくなってしまうからです。
Bという債券は利率4%です。昔発行された債券は利率3%です。発行体も同じ、格付けも同じ、財務状況も同じ、通貨も同じだった場合、誰もがBという債券を購入したがるでしょう。
そうならないために、何が起こるかというと、注目してください。
債券価格が、発行時100だったものが、価格99まで落ちるのです(正確には99.04とかそんなものだと思いますが)。
債券価格は、発行時100、償還時100と決まっていますが、償還を迎えるまでは債券価格は動きます。上にも下にも動きます。
このAの債券が100ではなく99に下がることによって、何が起こるのか、こちらをご覧ください。
金利上昇時におけるキャッシュフローのシミュレーション
Aの債券を購入した場合のキャッシュフローを書きました。
99で購入して、償還単価は100になりますので、価格で+1円の利益を上げることができます。
利率は3%で、満期までが1年間ということは、1年間で3円の利息を得ることができます。
そうすると、価格で1、利息で3、合計で4円の利益を1年間で上げることができます。
一方、Bという債券を購入した場合、発行価格100に対して償還価格は100になりますので、価格の利益・損失は発生しません。
利率は4%ですので、100×4%で4円の利息が入ります。そうすると合計で+4円の利益を上げることができます。
債券単価が下がることによって、過去に発行されたものも、今発行されたものも同じような条件になるわけです。
よって冒頭申し上げました「金利が上がると価格は下がる」というのは、昔発行された債券と今発行された債券を平等に扱うために、このように単価が動くということです。
金利低下時の債券価格と金利の関係
前のページでは金利上昇時の説明をしましたが、このページでは金利低下時の説明をしていきます。
Aという債券が発行されました。利率は3%、満期償還まで2年間です。
この債券が発行されてから1年後、市場金利が2%に低下したと仮定します。
市場金利が下がった後で、Bという債券が新しく発行されました。条件は額面が100に対して、利率は2%、満期までが1年間です。
前のページでも申し上げましたが、発行体が同じだった場合、AとBのどちらを買いたいですか?と聞かれたら、当然ですが、利率の高い3%のAの債券を購入したいです。
しかしながら、実際にはこの債券の条件は成立しません。どうなるかというと、
金利低下時におけるキャッシュフローのシミュレーション
Aという債券の単価が100ではなく101に上昇します。
この101に上昇することによって、このようなキャッシュフローが想定できます。
Aの債券を購入した場合、101で購入して、償還価格は100ですので、価格で-1円の損失をします。
一方、利息は3%もらえますので、+3円の利息が入ります。
そうすると、トータルリターンは+2円になります。
次にBの債券を見ていきます。Bの債券はすごくシンプルです。
100で購入して償還価格100で迎えますので、価格のもうけはありません。
利息というのは2%1年間で入りますので、2円もらえます。
そうすると、トータルリターンは+2円になります。
この計算をすると、Aの債券、Bの債券、どちらを購入しても同じようなキャッシュフローが期待できることになり、調整、もしくは平等な条件になるわけです。
先ほどお伝えし忘れましたが、額面101とここに書きましたが、おそらく正確に計算すると100.98くらいになると思います。
金利低下時の確認と補足事項
ここでもう一度確認をしていきます。
金利が低下する局面、過去に発行されたAという債券の価格は100から101に上昇したわけです。
ですから、金利が低下すると価格は上昇するということが、このページでしっかり証明できたのかなと思います。
債券価格変動に影響を与えるその他の要因
このページでは、まだお伝えしきれていない注意点をお話します。
債券価格は、金利だけでは無く、財務、景気、物価、需給でも変動します。特に2020年3月の社債価格急落は、需給による影響が大きかったと言われています。
世界一の銀行JPモルガンチェースのハイブリッド証券でさえ、一時-20%の急落をしていました。
中上級者向け:JPモルガンチェースのハイブリッド証券の例
ここからは、投資中級者から上級者の方へお話していきます。
今見ていただいているのは、JPモルガンのハイブリッド証券の価格です。表面利率は6.1%あります。ファーストコールが確か2024年10月中旬だったと記憶しています。
ファーストコールまでの利回りがなんと9%を超えていました。3月中旬にとんでもないことが起きていました。
私は正直、JPモルガンというのは世界一の銀行、世界一強力なBSを持つ銀行と考えているので、JPモルガンの破綻っていうのは全く考えていないんですね。考慮していないんですね。
ですから、JPモルガンのこの債券を購入していれば、パー償還+クーポンで40%近くの資産増が期待できたと、約束されているとは言いませんが、期待値がすごく高かったということです。
アメリカの減税、長寿税10%を差し引いたとしても、税引き後確か、どうでしょう?27%ぐらいの資産増がほぼほぼ見込めたという状況が3月にありました。ですからとんでもない絶好機だったということです。
まとめ:債券投資の新たな可能性
3月の株式債券急落時、「株式投資は少し怖くてできなかったよ」という投資家さんは、次回大きく下がった時は債券投資も考えてもいいのかなと思います。
ここまでご視聴いただき、どうもありがとうございました。チャンネル登録、コメント、高評価、低評価、よろしくお願いいたします。以上です。