さよならBLUE PROTOCOL:謎多き終焉と、その真の姿に迫る徹底レビュー

さよならBLUE PROTOCOL:謎多き終焉と、その真の姿に迫る徹底レビュー

さよならBLUE PROTOCOL:謎多き終焉と、その真の姿に迫る徹底レビュー

2024年8月28日、サービス終了が発表されたバンダイナムコオンラインの期待作『BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)』。2025年1月18日、ついにその幕を閉じました。しかし、その最期は、多くのプレイヤーに疑問と未練を残す、謎多きものとなりました。本記事では、サービス終了後の最終アップデートまでプレイした筆者が、BLUE PROTOCOLの全貌を徹底的にレビューし、その魅力と課題を深く掘り下げていきます。

BLUE PROTOCOLとは?壮大な投資と期待を背負った、アニメ調MMORPG

BLUE PROTOCOLは、バンダイナムコスタジオが開発し、バンダイナムコオンラインが運営していたオンラインアクションRPGです。2019年のクローズドアルファテストを経て、2020年にはベータテストを実施。そして2023年6月14日、満を持して正式リリースされました。

最大の特徴は、そのアニメ調の美麗なグラフィックと、MMORPGとしての要素を併せ持つ点です。しかし、このアニメ調は、中国発祥の原神などとは一線を画す、日本らしい独特のアニメーションスタイルで表現されていました。プレイヤーは、その美しい世界観の中で冒険を満喫できる、そんなゲームを目指していました。

期待と失望の狭間で:開発経緯と失われた未来

開発開始は2014年。100億円を超える開発費が投じられ、当初は「国際的MMORPGの未来を担うタイトル」として大きな期待を集めていました。しかし、ベータテスト段階から多くのプレイヤーがその不評を訴え始め、開発チームは2年間の沈黙期間を経てゲームの大幅な作り直しに着手。開発陣は「俺が信じる、お前を信じる」という強い信念のもと、再開発に挑みました。

しかし、この再開発は、根本的なゲーム性や不足している部分を解決するまでには至りませんでした。それは、後述するアドベンチャーボードの追加にも表れています。開発チームの苦悩と、その結果として生じた未完成さが、ゲーム全体に影を落としていました。

さらに、BLUE PROTOCOLの運営元であるバンダイナムコオンラインは、BLUE PROTOCOLを含む複数のゲーム開発中止と、BNO(Bandai Namco Online)自体の消滅という劇的な展開を迎えることとなりました。BLUE PROTOCOLは、BNOの最後の作品、そして一つの物語の終わりを象徴する存在となったのです。

物語の行方:謎だらけの最終章と、残された疑問

BLUE PROTOCOLの物語は、記憶喪失の主人公「ライジャ」が、謎の存在「アバリティア」と戦う冒険から始まります。当初は、暴れ狂う竜族が物語の中心でしたが、その後、未来人である「エイリンゼ」一族の登場により、物語は1000年後の未来から来た竜王「ボルディゲン」との戦いを軸に展開していきます。

エイリンゼの目的は、滅亡の未来を救うため過去を変えること。その方法は「1000年前のアバリティアを開放して時空の歪みを正す」ことでした。そして、星の獣と呼ばれる存在も明らかになります。ヨハネの黙示録を元ネタに、無数の世界に存在し、文明が滅亡の危機に瀕した時に文明を破壊するという、超自然的な力が絡む物語です。

最終章となる7章では、主人公はアバリティアシルル(アバリティアの一種で他のアバリティアを制御できるチート級の存在)の力を借りてボルディゲンと対決。しかし、その戦いは、プレイヤーの圧倒的な強さゆえに、あっけなく幕を閉じます。

最終章の主な疑問点:

  • 主人公ライジャの正体は何だったのか?
  • ライジャとボルディゲンの関係とは?
  • 最初に白い人影となってカーベインと戦っていたのはなぜなのか?
  • アバリティアシルルと星の獣の関係とは?
  • フェステが歌でアバリティアを鎮めた理由とは?

ライジャは、ボルディゲンに殺されるエイリンゼのビジョンを見たものの、その意味は最後まで明かされませんでした。アバリティアシルルは、エイリンゼと融合させる計画があったようですが、エイリンゼが剥離し、ティリスが代わりに取り込まれたことで暴走。星の獣が活性化し、星は滅亡の危機に瀕します。しかし、これらの謎は、最終章でも解き明かされることはありませんでした。

ゲームとしてのBLUE PROTOCOL:圧倒的な未完成と、その原因

BLUE PROTOCOLのゲーム性について、最大の課題はコンテンツの少なさと、その不均衡です。アップデートによってメインストーリーの経験値効率は劇的に向上しました。その結果、プレイヤーは比較的容易にレベル90まで到達できるようになり、メインストーリーをノンストップでクリアできるようになりました。しかし、それは、ゲーム全体のバランスを著しく崩す結果をもたらしました。

当初、メインストーリーを進めるためには、素材を集めて武器やイマジナリーをクラフトしたり、アドベンチャーボードを埋めたり、狩りを行ったりする必要がありました。しかし、アップデートによってこれらの作業の必要性が大幅に減少。カジュアルプレイヤーは数時間でストーリーをクリアできるようになりました。

ゲーム性の課題:

  • コンテンツの少なさ
  • バランスの悪さ
  • トレーディングシステムの欠如
  • PVP、PVEコンテンツの不足
  • 課金要素の不必要さ
  • コミュニケーション要素の貧弱さ

インスタンスダンジョンのマッチングが難しくなったことや、協同ミッションの救済措置も、マッチング可能なプレイヤーが限られる状況に陥り、機能不全を起こしていました。

エンドコンテンツの欠如:

エンドコンテンツとしては、武器のオプションガチャで最高性能を目指したり、4ヶ月ごとにレベルキャップを開放するといった要素がありましたが、それらがプレイヤーのモチベーションを維持するまでには至りませんでした。

BLUE PROTOCOLの失敗から学ぶ:日本製MMORPGの未来

BLUE PROTOCOLは、あらゆる点で未完成なゲームでした。それは、運営会社の消滅という形で、その終焉を迎えました。しかし、その失敗から学ぶべきことは少なくありません。

BLUE PROTOCOLの失敗から見えるもの:

  • コンテンツの質と量の不足
  • ゲームバランスの悪さ
  • 課金モデルの不適切さ
  • コミュニティの軽視
  • 長期的なビジョンの欠如

従来の日本のMMORPGは、時間をかけてじっくりと成長していくシステムが好まれていました。しかし、BLUE PROTOCOLは、その点を理解せず、短期間で多くのコンテンツを消費するプレイヤーを想定していたように見えました。

開発費100億円とも言われる大規模プロジェクトが、ここまで失敗する理由は、大規模開発ゆえの計画のずれ、そして短期的な成果に囚われた結果とも言えるでしょう。

終わりに:謎と未練を残して消えたBLUE PROTOCOL

BLUE PROTOCOLは、多くの謎と、そして未練を残して幕を閉じました。サービス終了後の最終アップデートは、多くのプレイヤーの期待に応えるものではなかったと言えるでしょう。しかし、その失敗は、今後の日本製MMORPGの開発に貴重な教訓を与えてくれるはずです。BLUE PROTOCOLは、単なる失敗作ではなく、業界全体の反省を促す、重要なケーススタディとなるでしょう。

このレビューが、BLUE PROTOCOLをプレイした方、そして今後のMMORPGの開発に関わる方にとって、何かしらの示唆を与えられれば幸いです。