高値掴み・安値掴みを回避するチェックリストとインジケーター

高値掴み・安値掴みを回避するチェックリストとインジケーター

高値掴み・安値掴みを回避するチェックリストとインジケーター

多くのトレーダーにとって、高値掴みと安値掴みは避けられない苦悩です。トレンドが大きく動いているのを見ると、どうしても追いかけてエントリーしてしまい、損切りに終わってしまう…そんな経験はありませんか? この問題はテクニカル分析とメンタル面、両方の改善で克服できます。この記事では、高値掴み・安値掴みを防止するための具体的な対策3つを、マインド面とテクニカル面の2つの観点から解説し、さらにそれらを常に実践できるインジケーターの使い方までご紹介します。

1. マインド:FOMO(Fear Of Missing Out)を克服する

高値掴みの原因の9割は「FOMO(Fear Of Missing Out:取り残される恐怖)」です。これは、大きな価格上昇の後、利益を得ている他のトレーダーを見て焦り、自分も参加したいという衝動に駆られる心理状態です。特にトレンドの3波目に乗れなかった時に顕著に現れます。

トレンドの3波目とは、チャートで一時的に反発した後、直近の反発起点の安値を上抜ける形で、前の高値を上回っていく動きを指します。下図のように、一度反発して下落した後、再び上昇を始める場面です。

[チャートイメージ:トレンドの3波目の説明図]

このような3波目では、SNSなどで「ロングしました!利益爆増中!」といった投稿が目に入り、ポジションを持っていない自分を負け組のように感じ、FOMOが掻き立てられます。

特に注意すべきは、トレンドの3波目です。 大きく動いた後に利益確定の動きが入ってくるため、レンジを形成したり、深い押しが来たりと、次の動き出すまでに時間がかかります。焦ってエントリーすると、利益確定の動きに巻き込まれて損失を被る可能性が高いです。

[チャートイメージ:トレンドの3波目の例]

例: ポンド円4時間足(2024年3月データ)

[チャートイメージ:ポンド円のチャート例。トレンドの3波目と追いかけエントリーによる損切りの例を示す]

このチャートのように、一時的に反発した後に大きな上昇トレンドが発生した時に、その流れに乗れていないと、焦って少し下がって来たところでロングエントリーしてしまい、利益確定で下落する動きに巻き込まれたり、反発してきたのを見てロングしてレンジに閉じ込められたりする可能性があります。

結果、さらに反発する動きに乗り遅れるという、典型的な高値掴みパターンに陥ってしまいます。上昇トレンドの局面では、FOMOが働きやすい状況と言えるでしょう。

2. テクニカル:高位足でのレジスタンスとレンジを確認する

高値掴みを回避するテクニカルな対策として、まず重要なのが高位足のレジスタンスを確認することです。

**例:**ユーロドル4時間足(2021年5月データ)

[チャートイメージ:ユーロドルのチャート例。高位足(月足)のトレンドラインとレジスタンスを示す]

このチャートでは、2021年4月頃から上昇トレンドが発生し、調整の動きを挟みながら高値を更新しています。しかし、高位足(月足)で確認すると、価格が過去のトレンドラインやチャネル、水平線といったレジスタンス要素に近づくと、トレンド方向のポジションの利益確定が入り始め、高位足のレジスタンス要素で反発・反落しやすいことがわかります。

特に、日足はチェックするものの、週足や月足といった長期足は確認しなかったり、チェックすることを忘れてしまいがちです。特に初心者や高値掴みが癖になっている方は、必ず高位足、特に週足に関しては最低週1回、月足に関しては最低月1回チェックするようにしましょう。

2-1. 高位足のレンジを確認する

もう一つ重要なテクニカルなチェックポイントは、高位足でレンジになっているかどうかを確認することです。

4時間足や1時間足、あるいは分足を見てみると、一見トレンドが発生しているように見えますが、視点を変え、長期の時間軸で見ると、一定の値幅を上下しているだけの、つまりレンジになっているということが非常に多くあります。特に、通貨ペアではこれが顕著です。FX取引をしている方は特に注意が必要です。

例: ドルカナダ通貨ペア4時間足 (2024年7月データ)

[チャートイメージ:ドルカナダのチャート例。高位足(週足)でレンジになっている様子を示す]

このチャートでは、一見上昇トレンドのように見えますが、週足で見るとレンジになっていることがわかります。レンジの上限、下限付近に近づくと、反落が起こりやすくなります。4時間足に戻って先の動きを確認すると、週足で確認したレンジの上限付近から反落し、それまでの上昇トレンドをほぼ全戻しするほどの下げが見られます。

高位足でレンジになっている場合、その上限や下限付近でポジションを持つことは高値掴みになりやすいので注意が必要です。高位足をしっかり確認し、更に、チャートを広く見て分析する習慣をつけると、より正確に市場状況を把握することができます。

3. 波の進捗具合を見る

相場は波でできています。トレンドが発生している時でも、一直線に動くのではなく、ジグザグを描きながら動いています。このジグザグの動きを波と言います。

波には、一定の値幅を動くと一旦反転するという修正があります。上昇トレンドでも「上がっては下がり、上がっては下がる」という動きをします。これは、ある程度の値幅を達成すると、短期・中期参加者の利益確定が入り始めたり、高位足の方向に沿った新規ポジションが入り始めるためです。

そのため、波の反転しやすい地点でポジションを持たないことが重要です。

3-1. フィボナッチを活用する

波の反転しやすいポイントとして、フィボナッチが活用できます。特に、1.618、2.618、4.236 の3つの比率は必ず押さえるべき重要な比率です。

例: ドルカナダのチャート(フィボナッチ適用例)

[チャートイメージ:ドルカナダのチャート例。フィボナッチ比率(2.618)と大きな上髭を示す]

このチャートでは、上昇トレンドの起点からフィボナッチを引くと、2.618のラインで大きな上髭が出ており、そこから下落していることがわかります。

いくら上昇トレンドが出ているからと言っても、近くに波の反転しやすいフィボナッチの比率がある中で無理にポジションを持たないということが、高値掴みを回避する対策の一つとなります。

4. POI(Point Of Interest)を設定する

4つ目のチェック項目は、押し目買いのPOI(Point Of Interest:関心点)を決めることです。POIとは、自分がポジションを持つべきかどうかを判断するゾーンのことです。価格がこのゾーンまで到達したら、初めて押し目買いをするか、戻り売りをするかを検討するゾーンです。

安易なエントリーや高値掴みを避けるためにも、しっかりとPOIを定めましょう。

例: ドル円5分足 (2024年10月23~24日データ)

[チャートイメージ:ドル円の5分足チャート例。ダブルボトムとフィボナッチ比率(38.2%)を示す]

このチャートでは、10月23日は大きな上昇を記録しました。翌24日の動きを見ると、小さなダブルボトムが形成されています。5分足のダブルボトムを見て押し目形成完了と判断し、ロングエントリーすると、更に下落します。このような場面で追いかけのロングは結果的に高値掴みになります。

しかし、この5分足のダブルボトムが発生した水準を高位足の視点で見ると、4時間足でフィボナッチを引くと、直近の上昇の38.2%の押し目にも達していないことがわかります。

押し目を見る時は、少なくともフィボナッチの黄金比の水準である38.2%~61.8%に到達するまでは何もせず、そこに来てから価格変動を見るべきです。 押し目形成と下げ止まりを確認する必要があります。特に5分足や15分足などの短期足ばかり見ていると、短期足の押し目形成や下げ止まりに反応してしまい、短期足思考になりがちです。

この例では、5分足の小さなダブルボトムは直近の上昇幅(約2円)に対して小さすぎます。よって、しっかりとPOIを定め、そこに来るまでは何もしない、それだけで十分です。特に、大きく伸びた3波目の後は注意が必要です。

5. チャートパターン:ウェッジに注意する

高値掴みをしないためには、トレンドの終盤でポジションを取らないようにすれば良いのですが、トレンドがどこで終了するかは誰にもわかりません。しかし、トレンド終盤で出現しやすいチャートパターンも存在します。それがウェッジです。

ウェッジとは、図にある通り、先細りになるチャートパターンです。くさび型とも呼ばれ、エリオット波動を見ている方はダイアゴナルという言葉を知っているかもしれません。

上昇トレンドの終盤に現れるウェッジについて説明します。ウェッジを形成している途中も、高値と安値の更新が続くため、上昇トレンドの定義は維持されます。しかし、トレンドの初期・中期と違うのは、高値更新の値幅が徐々に小さくなっていくことです。これは、トレンドが既に進行しており、上には大きな節目価格が控えているため、利益確定が入り始めるためです。

全体としては上昇トレンドが続いているので、下がれば押し目買いしてくる人もいるでしょう。しかし、反発すると、トレンドの初期・中期に参加している人にとって利益確定の機会にもなるので、再び下落します。全体としては買い手が優勢な状況が続いているのですが、買い手の利益確定も入り始めるため、高値更新の勢いは衰えます。これが先細りの形になる理由です。

そして、最後の高値更新の起点となる安値は、押し安値に該当します。このあたりに来ると、トレンドの中期・初期からの参加者の本格的な利益確定が始まり、トレンド転換の可能性が出てきます。

例: ユーロドル4時間足(ウェッジの例)

[チャートイメージ:ユーロドルのチャート例。ウェッジパターンを示す]

このチャートにもウェッジが現れています。練習として、3分足でウェッジを探してみてください。

ピンクの線で示した部分に、斜めに走っている赤い線が月足の過去のトレンドラインですね。長期足である月足に近づくにつれて、先細りの形になっていることがわかります。

[チャートイメージ:ユーロドルのチャート例。ウェッジパターンと高値更新幅の縮小を示す]

スイングハイの高値更新幅も、トレンド初期に比べると小さくなっていることがわかります。ウェッジの中を見てみると、高値更新幅は初期と比べてかなり小さくなっています。そして、この部分では高値更新に失敗しています。

月足という長期足の節目ラインが近づくにつれて、利益確定が入りやすくなり、トレンドの初期・中期に比べて高値更新の幅が狭まり、先細りの形状を形成するのです。その後、スイングローが当時の押し安値に相当します。この下を割ってから、相場が転換し始めました。

6. 高値掴みを防ぐインジケーター

これまで説明したチェック項目を、実際に日々価格監視やエントリー時に活用できるインジケーターを紹介します。

ノートに書いておいても、確認することを忘れてしまったり、どこにメモしたか忘れてしまったりする可能性があります。そこで、これらの項目をチェックリストとしてチャートに常に表示できるようにすれば良い、という発想から生まれたインジケーターです。

[チャートイメージ:インジケーターの表示例]

このインジケーターは、最大10個のチェック項目を設定でき、今回は6個の項目を紹介しています。他にミスが多い項目があれば、追加で入力できます。列の幅、フォントの色や背景色も自由に変更できます。

[チャートイメージ:インジケーターのカスタマイズ例]

このチェックリストは、ある程度継続して使うと思考に定着し、使わなくても自然と対応できるようになります。しかし、最初の頃や同じミスを繰り返している間は、脳の回路がまだ確認すべき事項に対応できていないため、このインジケーターが役立ちます。

トレードは一人でやるものではありません。このインジケーターを常に目に入る位置に表示させることで、自分の先生代わりとして活用することをおすすめします。このインジケーターは私が開発したもので、TradingViewのアカウントをお持ちの方なら誰でも使用できます。概要欄にリンクを貼ってありますので、ぜひ使ってみてください。

まとめ

高値掴みや安値掴みは、マインド面とテクニカル面の両面からアプローチすることで、簡単に改善できます。今回紹介したチェックリストとインジケーターをぜひ活用し、高値掴みを克服してください。動画の内容やツールが良かったと思われた方は、高評価をいただけると次回以降の動画作成の参考になります。概要欄には、高値掴みを防ぐための関連動画も載せています。合わせて視聴してみてください。