アニメ声優のミスキャスト4選！意外な理由と制作側の思惑を徹底解説

アニメ声優のミスキャスト4選！意外な理由と制作側の思惑を徹底解説

アニメや映画において、声優のキャスティングは作品全体の成否を大きく左右する重要な要素です。しかし、時に期待を裏切る、あるいは物議を醸すような「ミスキャスト」と呼ばれる事態が発生することもあります。今回は、特に話題になった4つのアニメ作品における声優のミスキャスト事例を、その背景や理由を深く掘り下げて解説します。単なる批判ではなく、制作側の意図や事情、そして結果として生まれた作品への影響までを多角的に考察することで、より深い理解を目指します。

1. 映画『未来の未来』：神木隆之介さんではなく、もえかちゃん？

2018年7月公開の細田守監督作品『未来の未来』。主人公・くんちゃん役を、女優の芦田愛菜さん（もえかちゃん）が演じたことが大きな話題となりました。細田監督は、過去に『時をかける少女』の中里梨紗さんや『サマーウォーズ』の神木隆之介さんなど、非声優を起用し成功を収めてきた実績があります。しかし、今回は異なる反応を呼びました。

問題点：

• 4歳児の声に聞こえない: 芦田愛菜さんの声は、4歳児の無邪気さや幼さを表現しきれていなかったという批判が多数寄せられました。
• 内容への没入を阻害: 芦田愛菜さんの演技により、作品世界への没入感が妨げられたと感じる視聴者も少なくありませんでした。
• 興行収入の減少： 前作『バケモノの子』と比べて、興行収入が40％も減少したという事実が、このキャスティングが商業的に成功しなかったことを示唆しています。

しかし、なぜ芦田愛菜さんだったのか？

実は、芦田愛菜さんは当初、オーディションで未来ちゃん役（黒木華さん演）を目指していました。細田監督は、芦田愛菜さんの泣き声がくんちゃんのイメージに「ジャストフィット」したと語っています。

つまり、芦田愛菜さんの起用は、彼女の演技力や4歳児役としての適性ではなく、彼女の泣き声に惹かれたという、いわば「直感」に基づくものであった可能性が高いのです。これは、商業的な成功を重視する現代のアニメ制作におけるリスクと、監督の個人的なこだわりが衝突した一例と言えるでしょう。 芦田愛菜さん自身は、未来ちゃんの役を希望していただけに、皮肉にも「被害者」と言えるかもしれません。 もし彼女が希望通り未来ちゃん役を演じていれば、このような批判は発生しなかった可能性も高いのです。

この事例は、声優の選定において、「声」だけでなく「演技力」や「役柄との適合性」といった多角的な視点が不可欠であることを改めて示しています。

2. 映画『ルパン三世 THE FIRST』：ヒロイン・レベッカ役の広瀬すずさん

2019年12月公開の山崎貴監督作品『ルパン三世 THE FIRST』。ヒロインのレベッカ役を、女優の広瀬すずさんが演じました。国民的人気アニメである『ルパン三世』シリーズに、実写で活躍する女優を起用したこと自体が、大きな話題を呼びました。

問題点：

• 独特の声と話し方： 広瀬すずさんの特徴的な声と話し方が、アニメ作品に合致しなかったという意見が多く聞かれました。
• 物語への没入を阻害： 広瀬すずさんの声が作品世界から浮いており、物語に集中しづらくなったという声も上がりました。
• 公開前から懸念：　公開前から、レベッカ役への広瀬すずさんのキャスティングは「ミスキャスト」ではないかと議論されていました。

映画やドラマとアニメの違い:

広瀬すずさんは、実写作品ではその可愛らしいルックスと演技力で高い評価を受けています。しかし、アニメ吹き替えでは、声だけでキャラクターを表現しなければなりません。

映画やドラマとは異なり、アニメの吹き替えは「声」だけが情報源です。広瀬すずさんの独特な声質と話し方は、実写では魅力となる一方、アニメでは作品世界との調和を欠き、物語の邪魔になってしまったと言えるでしょう。

この事例は、実写とアニメという異なる媒体における表現方法の違いを理解する重要性を浮き彫りにしています。 また、国民的アニメへのキャスティングは、視聴者の期待値が非常に高いことから、ミスキャストのリスクが他の作品と比べて高まることを示しています。

3. ジブリ作品『コクリコ坂から』：主人公・海役の長澤まさみさん

2011年7月公開のスタジオジブリ作品『コクリコ坂から』。ヒロイン・海役を、女優の長澤まさみさんが演じました。スタジオジブリ作品でも、メインキャストに非声優を起用するケースはありましたが、『コクリコ坂から』もまた、賛否両論を呼びました。

問題点：

• 抑えられた演技： 長澤まさみさんの演技が、やや感情を抑えすぎており、物足りない、棒読みのように感じるという批判がありました。
• キャラクター像とのミスマッチ： 長澤まさみさんの声のトーンや演技が、元気で活発な海のイメージと一致していなかったという指摘もありました。
• 感情がこもっていない： 長澤まさみさんの声に、十分な感情がこもっていないと感じる人も多くいました。

しかし、長澤まさみさんの演技は「計算されたもの」だった？

しかし、実は長澤まさみさんの演技には、明確な理由がありました。彼女はジブリ作品への出演を熱望しており、オーディションにも参加しています。しかし、最初は監督からダメ出しを受けます。そこで、普段通りの話し方でセリフを読んだところ、それが監督の求める「海の雰囲気」と一致したというエピソードがあります。つまり、長澤まさみさんの演技は、監督の求める「抑えた感情表現」という演出意図に基づいたものだったのです。

この事例からは、声優としての経験の有無に関わらず、監督の意図を正確に理解し、それを表現する能力が重要であることが分かります。

4. 映画『すずめの戸締まり』：鈴芽役の中村佳穂さん

2022年11月公開の細田守監督作品『すずめの戸締まり』。ヒロイン・鈴芽役を、シンガーソングライターの中村佳穂さんが務めました。この作品では、鈴芽が歌うシーンが多く、中村佳穂さんの歌唱力は作品に大きな魅力を与えました。しかし、演技面では一部批判も上がっています。

問題点：

• 歌唱シーンとのギャップ： 中村佳穂さんの歌唱力は素晴らしいものの、セリフを読む演技においては、声優としての経験不足が感じられたという意見もありました。
• プロの声優との差： 作品に、プロの声優を起用していれば、より自然で感情豊かな演技が期待できたかもしれません。

しかし、中村佳穂さんの起用は「成功」だった？

しかし、細田監督は、敢えて中村佳穂さんの持つ「現実の鈴芽」と「仮想世界のベル」という二面性を表現しようと試みた可能性があります。彼女自身の歌唱力と演技力の両面、そして経験不足が重なり合うことで、作品に独特の深みを与えたと言えるかもしれません。

さらに、物語後半にかけては、中村佳穂さんの演技が向上し、より自然で感情豊かな演技を見せるシーンも確認できます。これは、彼女がアテレコに慣れていったこと、あるいは鈴芽というキャラクターを通して、成長を遂げたことを表現した可能性も考えられます。

この作品は、「ミスキャスト」と断言するのは難しい例と言えるでしょう。監督の意図や、物語と演技の融合という視点から見れば、中村佳穂さんの起用は、成功と言えるかもしれません。

まとめ：ミスキャストは「失敗」だけではない

今回紹介した4つの事例は、一見「ミスキャスト」のように見えるものの、それぞれに背景や理由が存在し、単純に「失敗」と断じることはできません。

これらの事例から学ぶべきことは、声優の選定は、声の質や演技力、役柄との適合性だけでなく、監督の意図や作品全体の演出、そして商業的な成功といった多様な要素を総合的に考慮する必要があるということです。 そして、時に「ミスキャスト」と見られた事例が、かえって作品に独特の魅力や深みを与える可能性も秘めていることを忘れてはならないでしょう。 完璧なキャスティングなど存在せず、リスクとリターンのバランスをどう取るかが、制作側の腕の見せ所と言えます。

今後のアニメ制作において、今回考察した点を踏まえ、より多角的な視点で声優の選定が行われることを期待したいところです。