AIエージェントとワークフロー:Anthropic社の知見から紐解く効率的なシステム構築

AIエージェントとワークフロー:Anthropic社の知見から紐解く効率的なシステム構築

AIエージェントとワークフロー:Anthropic社の知見から紐解く効率的なシステム構築

はじめに:AIエージェントとは何か?

皆さんは「AIエージェント」という言葉をご存知でしょうか?2025年、AIエージェントの時代が到来すると盛んに言われていますが、具体的なイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。

簡単に言うと、AIエージェントは独立して思考し、様々なツールを使ってタスクを実行してくれるAIです。例えば、「明日の天気は?」と質問すれば、言語モデル自身の知識だけでは答えられないため、Web検索を行い、その結果を元に回答を生成します。

しかし、AIエージェントは万能ではありません。全ての課題に最適な解決策とは限りません。そのため、AIエージェントがどのような仕組みで動作するのかを理解することは、効果的に活用するために非常に重要です。

本記事では、言語モデル開発企業であるAnthropic社が公開した記事を元に、AIエージェントの仕組みと、効率的なシステム構築のためのワークフローパターンを解説します。最新の生成AIについて知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

Anthropic社によるAIエージェントに関する知見

Anthropic社は、Claudeという言語モデルを開発している企業です。同社は、効率的なAIエージェント開発のための考え方やパターンをまとめた記事を公開しており、その内容からAIエージェントの深い理解へと繋がります。

同社は大きく分けて2つの技術を公開しています。

  • コンピュータユース: 昨年10月末に公開された技術で、パソコン操作を自動化してくれるエージェントです。ユーザーが「〇〇を調べてほしい」といった指示を入力すると、Claude言語モデルを使ったエージェントが自動的にWeb検索を行い、結果をまとめた情報を提供します。デモでは、Googleスプレッドシートへの情報入力なども自動化できることが示されています。より詳細を知りたい方は、過去の動画を参照ください。(動画へのリンクは記事末尾に記載)

  • Model Context Protocol: 昨年11月末に公開された技術で、言語モデルと外部システムを自由に連携させるための標準化された仕組みです。複雑な処理となりますが、パソコン上のデータベースやファイルへのアクセス、インターネット経由での外部システムとの連携などが可能になります。こちらも過去の動画で紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。(動画へのリンクは記事末尾に記載)

これらの技術を理解することで、AIエージェントがどのように機能するのか、より詳細な理解が可能になります。

AIエージェントとワークフローの違い

記事では、AIエージェントとワークフローという2つの概念について言及しています。どちらも複雑なタスクを処理するシステムですが、明確に区別されています。

  • ワークフロー: 事前に決められた処理を順番に実行するシステム。カスタマーサポートセンターでの自動応答システムなどが例として挙げられます。どのような質問に対してどの言語モデルを使うかといったルールを事前に設定できます。DeFi(分散型金融)やツールを使っているユーザーは、まさにワークフロー型のエージェントシステムを作っていると言えるでしょう。

  • エージェント: 動的に、ダイナミックに処理を生成し実行していくシステム。言語モデルが自身で処理手順を考え、実行していきます。例えば、業界動向のレポート作成を依頼した場合、エージェントはWeb検索で情報収集を行い、その情報がレポート作成に十分かどうかを評価し、不足があれば再度検索を行うといった処理を自律的に繰り返します。

重要な違いは、ワークフローが事前に決められた処理手順に従うのに対し、エージェントは実行結果を元に次の行動を自律的に決定する点にあります。

AIエージェントシステムの構築パターン

Anthropic社の記事では、AIエージェントシステム構築における4つのパターンが紹介されています。

1. プロンプトチェイニング

このワークフローは、ユーザーが入力した内容を基に言語モデルが呼び出され、処理が成功したかどうかを条件分岐しながら処理を続けます。成功すれば、次の処理へと進み、言語モデルを使って後続の処理を行っていきます。

**例:**マーケティングコピーの作成と翻訳、文書の概要要約と条件チェック、SNS投稿作成と文字数制限のチェックなど。

2. ルーティング

ユーザー入力を言語モデルが受け付け、次に実行する言語モデルを決定する仕組みです。

**例:**DeFiでは、ユーザー入力を元に営業部門関連の質問か技術部門関連の質問かを判断し、適切な言語モデルを呼び出すことができます。質問の難易度に応じて、強力なモデルか安価で高速なモデルを使い分けることも可能です。

3. パララライゼーション(並列処理)

複数の言語モデルを同時に実行し、その結果を統合して回答を生成するワークフローです。

**例:**ユーザーが入力した文書に対して、複数の言語モデルがそれぞれ異なる観点(技術的観点、日本語の正確性、文章の長さなど)から評価を行い、その結果を統合してレポートとして出力するといったケースが考えられます。

このように並列処理を行うことで、処理速度の改善が期待できます。入力に対する料金は安価になり、出力の質を向上できる可能性があります。

4. オーケストレーターワーカーズ

このパターンは、オーケストレーター(調整役)が複数のワーカー(実行役)を管理する構造です。ユーザー入力がオーケストレーターに送られ、複数の言語モデル(ワーカー)を適切に割り当て、タスクを実行し結果を統合して回答を生成します。

**例:**Power Platform AIに近い挙動で、ユーザーの検索要求を複数のタスクに分割し、検索を実行、結果をまとめ、出力するといった処理が考えられます。

ワークフローとエージェントの選択:シンプルさを重視する

AIエージェントシステムを構築する際には、可能な限りシンプルなものから始めることが推奨されています。エージェント的なシステムは、何度も言語モデルを使用するため、処理速度が遅くなったり、コストが高騰する可能性があります。そのため、最初はシンプルなワークフローで構築し、必要に応じてエージェント的な機能を追加していく方が効率的です。

ワークフローは、処理手順が予測できるため、ボトルネックの特定や改善が容易です。一方、エージェントは動的な処理を行うため、開発・改善が複雑になります。そのため、多くの場合はワークフローで事足りる可能性が高いです。

エージェントが必要となるケース

エージェントが必要となるのは、処理結果に応じて次の行動が変わるような場合です。例えば、コンピュータユースのように、実行結果によってファイルを読み込んだり編集したりするような状況では、ワークフローでは対応が難しいです。

フレームワークの利用:必要に応じて

LangChainなどのフレームワークは、少ないコードでAIエージェントシステムを構築できます。しかし、シンプルなシステムであれば、フレームワークを使わずに言語モデルのAPIを直接使う方が効率的です。フレームワークは、複雑なシステムや高度な機能が必要になった段階で導入する方が良いでしょう。

まとめ:正しいシステムを構築すること

AIエージェントと聞くと高度な技術のように聞こえますが、まずはシンプルなシステムから始めて、必要に応じて機能を拡張していくことが重要です。複雑なシステムを目指すのではなく、正しいシステムを構築することを目指しましょう。

多くの場合、ワークフローだけで十分な機能が実現できる可能性が高いです。今回解説したワークフローパターンを参考に、自身のニーズに合ったシステム構築を目指してみてください。

個人的な見解

個人的な経験から、業務での言語モデル活用を考えると、多くの場面でワークフローだけで十分だと感じます。今回紹介したワークフローパターンを拡張・変更することで、ほとんどの状況に対応できるでしょう。そのため、現状のビジネスにおいて、AIエージェントのようなものを開発する必要性はそれほど高くないかもしれません。

AIエージェントは環境に適応してワークフローを自動生成するシステムと言えるでしょう。しかし、リアルタイムでワークフローを作り変える必要があるケースは多くありません。まずはワークフローを構築し、業務効率化を進める方が現実的です。

ご自身の感想や意見があれば、ぜひコメントでご共有ください。本記事で紹介した記事へのリンクは概要欄に掲載していますので、興味があればご覧ください。

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