アフリカで避妊がされない理由:3つの要因と誤解を解くために
- 2024-12-24
アフリカで避妊がされない理由:3つの要因と誤解を解くために
アフリカ諸国の貧困問題に取り組む活動を紹介するYouTubeチャンネルを運営するハラカンタ氏。彼の動画には、「なぜアフリカの人々は貧しいのに避妊をしないのか?」というコメントが頻繁に寄せられます。この疑問に対し、ハラカンタ氏はアフリカのブルンジ共和国を訪問した経験を元に、その背景にある3つの理由を解説しています。本記事では、音声データをもとに、ハラカンタ氏の主張を詳しく解説し、アフリカにおける避妊に関する誤解を解き明かしていきます。
アフリカという巨大な括り:先入観を捨てることから
動画冒頭でハラカンタ氏は、アフリカという地域を語る上での重要な前提を提示しています。それは、アフリカは非常に広大で多様な地域であるということです。YouTubeに溢れる膨大な数の動画の中から、アフリカという遠く離れた世界の出来事に興味を持ってもらうために、ハラカンタ氏は「アフリカ」という分かりやすい言葉を使っています。しかし、この言葉は「アフリカ大陸」という地理的な名称であり、「アフリカ人」という言葉は「アジア人」と呼ぶのと同じように、多様な文化や社会を持つ人々をひとくくりにしていることを認識しなければなりません。
メルカトル図法による世界地図では、高緯度の地域は実際よりも大きく表示され、低緯度の地域は実際よりも小さく表示されます。そのため、赤道付近にあるアフリカ大陸は、相対的に小さく見えてしまうのです。ハラカンタ氏は、メルカトル図法を修正した地図を示し、アフリカ大陸の面積が日本の約80倍、アメリカ、中国、インド、ヨーロッパ、日本を合わせた面積よりも広いことを強調します。14億人以上の人々が暮らすこの広大な大陸には、それぞれ異なる顔、名前、考え方、生活様式を持つ人々が存在するのです。
「アフリカ人」をひとくくりにして考えることは、まるで「アジア人」をひとくくりにして考えるようなものだとハラカンタ氏は指摘します。日本やヨーロッパの人々が日本人、韓国人、中国人をみんな「アジア人」だと言うのと同じように、アフリカ大陸全体を同じように捉えるのは誤りです。この認識が、アフリカにおける避妊に関する議論を進める上での第一歩となります。
アフリカで避妊がされない3つの理由
ハラカンタ氏は、アフリカで避妊がされない理由として、以下の3つの要因を挙げています。
1. 教育と意識の問題:避妊に関する知識と意識の不足
多くの地域で性教育の機会が不足していることが、避妊に対する意識の低さに繋がっています。多くの学校やコミュニティでは性教育がカリキュラムに含まれていないか、非常に限定的な情報しか提供されていません。性に関する基本的な知識が欠けている場合も多く、これが避妊に対する意識の低さにつながります。
一部の地域では、性に関する話題自体がタブー視され、公然と話すことが避けられています。ハラカンタ氏自身も、ウガンダで経済的な貧困から生理用品を入手できない少女たちの支援活動に関わった経験があり、そこで性に関する話題がタブー視されていることを知りました。彼の活動は、繰り返し使える布ナプキンの作り方を教えるものでした。(過去動画で紹介されているとのこと)
若い世代が性に関する正しい知識を得る機会が制限されていることは、誤った情報や迷信が広まる原因にもなっています。避妊具や避妊薬が健康に悪影響を及ぼすといった誤解も広がっており、これらの教育と意識の問題が、避妊がされない大きな理由のひとつとなっています。
2. 文化的な背景:子どもを産むことの重要性
アフリカ大陸には多様な社会や文化が存在しますが、多くの地域で子どもを産むことは重要な価値観とされています。子どもは家族の繁栄の象徴であり、将来世代のために財産を残す手段として重視されているのです。
経済的に貧しい農村部など、伝統的な生活様式が残っている地域では、子どもをたくさん産めない女性は社会的に認められないという現実もあります。男性の方が地位が高く、子どもを産むかどうかの決定権が女性にないケースも多いです。ブルンジの女性が暮らす社会にも、このような価値観が根強く残っている可能性があることをハラカンタ氏は示唆しています。
3. 経済的な要因:避妊具へのアクセスと費用
アフリカの貧しい地域では、1日あたりの収入がわずかな数十円から数百円という人が大半です。避妊具の費用は相対的に高いため、入手自体が困難です。コンドームなどの避妊具は、たとえ利用可能であったとしても、家計にとって大きな負担となります。避妊具の供給不足も問題で、特に農村部では十分な供給がされておらず、入手がさらに困難になっています。
しかし、ハラカンタ氏はウガンダの地方で生活していた際に、海外の援助機関がホテルやゲストハウスでコンドームを無料で配布している様子を何度も目撃したと述べています。大きな透明な箱が壁にかけられ、大量のコンドームが置かれ、「自由に持っていってください」と書かれていたそうです。(アメリカ合衆国のUSAIDによるものと推測)しかし、ホテルやゲストハウスに宿泊できるのは、ある程度お金を持っている人たちだけです。つまり、無料配布という支援は、真の貧困層には届いていない可能性があるのです。また、避妊具の使い方に関する知識も一緒に広めていく必要があります。無料配布だけでは不十分なのです。
アフリカの貧困と避妊:誤解と現実
ハラカンタ氏は、動画撮影後に編集中に見つけた写真も紹介しています。これは赤十字とUNFPA(国連人口基金)によるコンドームの無料配布を示す看板の写真で、ウガンダの首都カンパラで撮影されたものです。
アフリカの貧しい地域では病院や診療所が不足しているか、非常に遠い場所にしか存在しません。そのため、性に関する医療サービスを受けることも困難です。
これまで経済的な理由から避妊具を入手できなかったり、避妊に関する医療サービスを受けられなかったりする理由を説明してきましたが、経済的な理由から敢えて避妊をしない人もいます。アフリカの貧しい地域では、家族が生活していくために親だけでなく子どもも働かなければならない状況があります。子どもも立派な労働力なのです。特に農村部では、農業で生計を立てているため、子どもが農業で労働力になるケースがあります。また、何か物を販売するといった仕事に関わっている子どももいます。ブルンジで魚を売っている子どもへのインタビュー映像も紹介されています。
子どもたちが働く理由は様々ですが、家族の生活費を稼いだり、自分の学費を稼いだりする必要があるためです。子どもの労働は一般的には問題視されますが、貧しい国々では、子どもが働かなければ生活が成り立たないという現実があります。子どもが労働力になるため、避妊せず子どもをたくさん産む選択をするのです。
教育、文化、経済:複雑に絡み合う要因
教育と意識の問題、文化的な背景、経済的な理由、これら3つの理由を見てきましたが、中でも問題視されることが多いのが、避妊に関する知識不足です。サハラ砂漠より南のアフリカでは、十代の妊娠や早すぎる結婚が大きな問題になっています。避妊の方法を知らずに性交渉をして妊娠し、そのまま出産してしまう女性が沢山いるのです。教育を十分に受けられなかった若い女性は、自分の子供にも正しい知識を授けることができず、同じことが繰り返されてしまいます。この貧困の連鎖が問題視されています。
しかし、これらの問題はアフリカの全ての場所で起きているわけではありません。都市部に住む女性たちは避妊に関する知識を持っている一方で、若年妊娠の多くは農村部で起きていることが指摘されています。例えば、ケニアでは1970年には女性1人当たりの出産数は8人でしたが、2021年には3.3人にまで減少しています。数十年前のマサイ族のイメージに止まっていた人にとっては驚きの変化でしょう。しかし、もっと驚くデータがあります。ケニアの中でも、女性の出産数には大きな差があります。農村部や地方では6~8人程度ですが、首都ナイロビではわずか2.5人です。この数字は2019年のデータであるため、2024年現在は2.2人くらいになっていると考えられます。つまり、「アフリカ人」と言っても、ナイロビのような都市部で生活する家族の場合、子どもの数は先進国とそれほど変わらないのです。
都市部では生活スタイルも異なるため、子どもをたくさん産んで労働力にすることも難しくなります。農業で自給自足の生活を送ることも難しいので、子どもが増えると家計の負担にもなります。
アフリカをひとくくりで表現しても、地域によって様々な状況があることを理解しておきましょう。ハラカンタ氏は、同様のテーマとして「アフリカの女性が子どもをたくさん産む理由」という動画もアップロードしており、その動画には、「戦中生まれ、農村育ちです。昭和20年代、子どもも立派な労働力でした。農作業だけでなく、風呂を沸かしたり、料理の下ごしらえをしたり、家畜、鶏や牛の世話をしたりと、子供たちのては欠かせません。同級生の半分以上が中卒だった地域で、当然塾もないから、子供を産むのに教育費の心配をする親はいません。お話し…のアフリカ農村部の状態は、つい70年前の日本の姿です。」といったコメントが寄せられています。
このコメントは、ハラカンタ氏自身の昭和31年生まれ、5人兄弟で誰も幼稚園に行かなかったという経験、5歳頃から家業を手伝っていたという経験にも共感できるものです。
偏見をなくし、共感する心を育む
アフリカ諸国を訪問し、現地の状況を発信しているハラカンタ氏には、「なぜ貧しいのに避妊しないのか?」といったコメントが寄せられます。純粋な疑問であれば構いませんが、ときにはアフリカの人々を見下すかのようなコメントも含まれます。経済が発展した現代の日本から見ると、アフリカの人々の現状を理解するのは難しいこともあります。しかし、かつて日本にも同様の時代がありました。
アフリカに対して偏見を持ってしまっていると、アフリカをどこか別の世界のよう捉えてしまい、真の理解を妨げてしまいます。正しい知識を身につけることで、アフリカに対する偏見をなくし、同じ地球で同じ時代を生きる同じ人間として、アフリカで起きている出来事に関心を持ち、共感する心を育むことが大切です。ハラカンタ氏の動画を通して、それが伝われば嬉しいと彼は語っています。
今回のテーマは過去にも扱ってきたものであり、改めてこのテーマを取り上げたのは、アフリカに対する典型的な偏見のひとつだからです。実際、そのようなコメントが非常に多く寄せられているからです。偏見を減らすことは、相互理解につながり、相互理解が共感につながります。
ハラカンタ氏は、国際協力や社会貢献について考えるオンラインコミュニティ「シナジー」を運営しており、共に活動するメンバーを募集しています。彼のYouTube動画を見て、もっと深く学びたい、何かアクションを起こしたいと思った方は、ぜひシナジーのホームページをご覧ください。ハラカンタ氏のチャンネルでは、他のチャンネルでは知る事が難しい世界の課題について分かりやすく解説しています。チャンネル登録がまだの方は、ぜひこの機会に登録してください。