初心者投資家が失敗する5つのパターンと長期投資を成功させるための対策
- 2025-01-07
初心者投資家が失敗する5つのパターンと長期投資を成功させるための対策
近年、少額から始められる「積立投資」の人気が高まり、投資を始める人が増えています。しかし、投資信託の保有年数は平均3年程度とされ、長期的に投資を継続できる人はごくわずかです。この記事では、初心者が投資を挫折してしまう5つの典型的なパターンとその対策を解説します。 金融庁の調査によると、2024年3月末時点の投資信託口座数は約2323万口座と、前年比で約400万口座も増加しています。この増加は、まさに投資ブームと言えるでしょう。しかし、このブームの裏で、多くの投資家が早期に投資を諦めているという現実があります。
1. インフルエンサー任せの投資:情報収集の盲点
InstagramやYouTubeなどで、「オルカン」「S&P500」などのインデックスファンドが合理的だから買うべき、といった投資情報を目にする機会が増えています。確かにこれらのインデックスファンドは長期的な視点で優れた投資対象と言えますが、インフルエンサーの推奨だけで投資を始めるのは危険です。
なぜなら、インフルエンサーの推奨は、その商品が本当に自分に合っているか、その商品特性を理解しているか、といった重要な要素を考慮せずに、表面的な情報だけで判断している可能性があるからです。
例として、2024年前半は円安・株高の好調な相場が続きましたが、7月下旬から8月にかけて世界的な株安・円高のダブルパンチが発生しました。この時、オルカンやS&P500に投資していた多くの人が資産の評価額を最大で20%近く減少させ、ファンドを解約したのです。
8月7日には国内の投資信託から1日だけで1兆6000億円以上の資金流出があったと報告されています。その中でも、iMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は約2260億円、iMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)は約78億円が1日で流出しました。
これらの事例からわかるのは、流行に乗っかって投資を始めたものの、投資対象に関する知識が不足していたため、下落に耐えられず投資を諦めてしまった人が多かったということです。
対策:
- 徹底的な情報収集と理解: 投資商品は、インフルエンサーの言葉だけでなく、自分でしっかりと調べ、商品の特性を理解した上で投資しましょう。ファンドの組入銘柄、リスク、運用方針など、重要な情報を把握し、自分の投資目標に合致するかどうかを判断する必要があります。
- 自分の投資方針を確立する: 「なぜこの商品を選ぶのか」を明確にして、感情に左右されない投資方針を立てましょう。
2. 楽観的なシミュレーションへの盲信:現実とのギャップ
投資をする際に、年利5%で運用できたらという右肩上がりのシミュレーションをよく目にします。多くの人が、このようなシミュレーションを参考に投資を始めますが、これは非常に危険です。
なぜなら、このようなシミュレーションは期待リターン(年利5%や7%など)しか考慮しておらず、現実の市場変動を反映していないからです。現実の市場では、株価は常に変動しており、時には大きな下落によって資産が吹き飛ぶこともあります。
右肩上がりのシミュレーションを信じていた場合、資産が減る局面が訪れると当然、落胆します。大きな下落が来ると、「こんなはずじゃなかった」とパニックになり、損切りしてしまう可能性も高いでしょう。こうなると、お金を失うだけでなく、後から上昇相場が来ても市場に参加していないため、利益を得るチャンスを逃してしまいます。
対策:
- 期待リターンだけでなくリスクも考慮する: 期待リターンだけでなく、リスク(価格の変動幅)も考慮した上で投資計画を立てましょう。例えば、全世界株式の期待リターンが年率5%程度であるのに対して、リスクは年率19%程度あります。これは、1年後には平均値からプラスマイナス19%以内に68.3%、プラスマイナス38%以内に95.5%が収まることを意味します。
- 具体的な数値で考える: 100万円を投資した場合、期待リターン5%を平均値と考えると、1年後の資産額は68.3%の確率でプラス24万円からマイナス14万円の範囲に、95.5%の確率でプラス43万円からマイナス33万円の範囲に収まることになります。平均的にはプラス5万円となります。
- 損失許容範囲を設定する: 事前に許容できる損失額を決め、その範囲を超えたら損切りを行うルールを設定することで、大きな損失を防ぎます。
3. 本能に拠る感情的な判断:プロスペクト理論と長期投資の不適合
多くの人は長期の積立投資をしようと投資を始めますが、人間の心理的な要因により、多くの人が継続できません。
プロスペクト理論によると、人間は本能的に損失を回避しようとする傾向があります。1万円儲かる喜びよりも、1万円を失う苦痛の方が大きいのです。つまり、人間は利益よりも損失に敏感に反応します。
この本能と長期投資は相性が悪いです。長期のインデックス投資は、相場に関わらず継続する必要があり、下落局面でも積み立てを続けなければなりません。しかし、損失を避けたいという本能と相反するため、感情的に辛くなり、投資を諦めてしまう人が多くなります。
逆に、利益が出ている場面でも、「ここで売れば確実にプラスになる。売らなかったらマイナスになるかもしれない」と考えてしまうこともあります。結果として、利益確定したい衝動に駆られ、投資を辞めてしまうのです。
対策:
- 感情に左右されない投資戦略: 感情に左右されないように、あらかじめ明確な投資目標と戦略を立て、それを淡々と実行しましょう。
- 長期的な視点を持つ: 短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で投資を継続することが重要です。
4. 「うまくやろうとする」罠:市場平均を超えようとする危険性
投資を始めてしばらく経つと、慣れてきて「もっとうまくやろう」と考え始める人が出てきます。例えば、相場が下がる前に売って、上がる前に買おうとしたり、市場平均よりも高いリターンを得ようと個別株などに乗り換えたりします。
インデックス投資の期待リターンは年率5~7%程度と高くありません。SNSなどで、投資で大きな利益を出している人を目にすると、「インデックス投資だけでは儲からない、もっと大きな利益を出そう」という欲が出てしまいます。
しかし、基本的には「うまくやろうとする」ことは、天才を除いて、かえってリターンを下げる失敗につながる行為です。東京大学の学生向けの金融セミナー資料によると、過去30年間のS&P500の年平均リターンは11.11%でしたが、実際にS&P500に連動するファンド保有者が得たリターンは平均3.69%でした。これは、多くの投資家がタイミングを計ったり、市場に出入りしたりした結果、株価が大きく上昇する局面を逃していることを示しています。
対策:
- 市場平均を上回ることを目指さない: 市場平均を上回るパフォーマンスは非常に難しいため、市場平均を基準に、リスクを許容範囲に収めることを重視しましょう。
- 個別株への投資は慎重に: 個別株はリスクが高いため、十分な知識と経験がないうちは避けるべきです。
5. ハーディング現象:周りの影響による無計画な投資開始
積立投資は大きなトレンドであるため、テレビやネットなどで関連情報を多く見聞きし、周りの人も始めると「自分もやらなければ」という心理が働きます。これが「ハーディング現象」です。
友人や同世代が積立投資をしていると、「自分も同様に投資をしておこう」という気持ちになりがちです。しかし、商品特性を十分に理解せずに始めるのは危険です。
対策:
- 周りの影響を受けすぎない: 周りの意見に流されず、自分の判断で投資を行うことが大切です。
- 投資前に十分な知識習得: 投資を始める前に、商品特性やリスクなどを十分に理解する必要があります。
まとめ:積立投資を成功させるために
積立投資を始めることは素晴らしい一歩ですが、成功させるには「ほったらかし」だけでは不十分です。 この記事で紹介した5つの失敗パターンを理解し、適切な対策を取ることで、長期的な資産形成を実現できる可能性が高まります。
成功のための具体的な対策:
- 徹底的な学習: 投資対象の特性、リスク、市場の動向などについて、書籍やニュースなどで十分な知識を身につけましょう。
- 明確な出口戦略: 投資をいつ終了するか、どのような条件で売却するかをあらかじめ決めておきましょう。例えば、「65歳以降、年率4%ずつ取り崩していく」といった具体的な計画を立てます。
積立投資は、長期的な視点と計画性、そして継続的な努力が不可欠です。この記事を参考に、賢く投資を行い、将来の資産形成を目指しましょう。