2012年、私が異世界に行った話…そして、奇妙なマンションの庭で起きたこと
- 2024-12-31
2012年、私が異世界に行った話…そして、奇妙なマンションの庭で起きたこと
2012年、ある匿名の書き込みが2ちゃんねるに投稿され、大きな話題を呼びました。タイトルは「2012年、私が異世界に行った話」。よくある都市伝説的な書き込みかと思われましたが、そのリアリティあふれる内容、そして予想だにしない展開は、多くの読者を魅了し、今もなお語り継がれる伝説となっています。
大学卒業と奇妙なマンション
物語の主人公は「イッチ」という人物。彼は2012年4月、大学を卒業し、新しいマンションに引っ越してきたばかりでした。このマンション、その構造が尋常ではありませんでした。
イッチの住むマンションは、図のように中央が中庭になった6階建ての建物。中庭への出入り口は、マンションの玄関からしかなく、他の部屋からはアクセスできないのです。さらに、中庭の地面や壁はコンクリートで造られており、特に用途がない、いわば殺風景な空間でした。
唯一、イッチの部屋だけが、中庭へと続くドアを持っていました。
不穏な中庭
5月のある日、イッチは部屋の掃除をすることに。小さな虫が湧いていることに気づき、殺虫剤をまくことにしました。初めて中庭に出たイッチは、殺虫剤をまいているうちに、ふらふらする感覚を感じましたが、「吸い込みすぎただけだろう」と特に気にしていませんでした。
しかし、1ヶ月後。ほうきとちりとりを持って再び中庭へ入ったイッチは、再び異様な感覚に襲われます。
- めまい
- 吐き気
- 気分の悪さ
彼は、気温や空気の滞留が原因だと考え、休憩を挟みながら中庭の掃除を続けます。しかし、彼はあることに気づきました。中庭にいる間はめまいと吐き気に襲われるものの、部屋に戻るとすぐに回復するのです。
これは一体…
管理会社への連絡と不可解な調査
「何かヤバい気体でも漂っているんじゃないか?」と不安になったイッチは、管理会社に連絡。管理会社は、以前住んでいた人からの連絡は特にないものの、念のため中庭を調査してもらうことにしました。
管理会社の人が調査をしてくれましたが、特に異常は見つかりませんでした。めまいを訴えているのはイッチだけだったのです。
その後も、イッチは中庭に入ると異常を感じ続けました。しかし、彼は重要なことに気づきます。中庭に入り、部屋との境にあるドアを閉めることが、症状を引き起こす条件だったのです。
10月の異変と現実の歪み
数ヶ月後、10月。イッチは掃除のため再び中庭に入ります。この日は気温も良く、イッチの体調も万全。しかし、中庭に入った途端、これまで以上に強いめまいが襲ってきます。
ドアを閉めた瞬間、上下すら分からなくなり、倒れるイッチ。彼は左右に転げ回り、吐き気を感じながら、視界が赤黒く染まり、一瞬意識を失ってしまいます。
しかし、まばたきをした瞬間、視界の赤黒さは消え、気分の悪さも消え失せていました。イッチはそのまま掃除を続け、部屋に戻ります。
異様な光景
水を飲もうとキッチンへ向かうと、イッチは窓から見える空に気づきます。
「今日はいい天気だなあ」
彼はノンキにそう思いながら、漫画を読むためにコンビニへ向かいます。しかし、玄関から出たイッチが目にした光景は、あまりにも異常なものでした。
- 空が異様に濃い青色
- 空が異様に高い
- 説明できない異臭
さらに、町内会の掲示板には、意味不明な言葉が書き連ねられていました。例えば、
たかつめるゆふかき のさとう
日本語の単語が、まるでランダムに並べられたかのような、意味不明な文章です。
コンビニへ向かう道中も、異常な光景は続きます。花屋には
花屋はヤハハイ
コンビニには
いいめだ
といった、意味不明の言葉が掲示されていました。通行人や車は変わってはいませんでしたが、看板の文字は全ておかしかったのです。
コンビニと現実の崩壊
コンビニに入ると、店員は意味不明な言葉を話し、棚に並んだ本の表示も掲示板と同じ状態でした。
あよだなまありさあ
不安が膨らむイッチは携帯電話を取り出しますが、電波は圏外。しかし、メールなどは日本語で送受信できます。再び、コンビニに並ぶ商品を見ると、わけのわからない日本語が羅列されていることに気がつきました。
恐怖を感じたイッチはコンビニを飛び出します。「おかしい、おかしい」そう思いながら部屋に戻り、テレビをつけると、そこでは理解不能な言葉が飛び交い、見たことのない番組と知らないタレントばかりが映し出されていました。
病院への道と不可解な出来事
イッチは自分がおかしくなってしまったのではないかと感じ、病院へ向かいます。しかし、道中の看板も意味不明な言葉ばかり。不安がつのり、「とにかく知っている人に会いたい、話したい」という一心で病院へと急ぎます。
スレ民に「変な薬を飲んでないか?」と聞かれると、イッチは速やかに否定します。
病院での不可解な出来事
言葉が通じるか不安を感じながらも病院に着くと、案内板は意味不明で、受付の人と会話は通じず、保険証を見せても首をかしげられてしまいます。受付の人にはうなうなと何か言われ、後ろから白衣の男が出てきますが、やはり会話は成立しません。
身振り手振りで誘導され、言葉を交わそうとするも、何も伝わらないまま、しばらくすると警官らしき人物が3人やってきて、イッチは優しく連行されます。
パトカーの中でも優しく声をかけられるものの、もちろん意味が分かりません。不安で仕方のないイッチは精神的にも限界に達していましたが、警官の優しさのおかげで、大人しく従うことができました。
警察署と不可解な液体と菓子
警察署らしき施設に到着したイッチは、応接室に通されます。そこで出されたのは、緑色の液体の飲み物とお菓子でした。
腹ペコのイッチは一心不乱にお菓子をむさぼり食べます。すると、スーツを着た男が部屋に入ってきました。イッチは天来光の様な光を浴びせられます。どうやら何かを観察している様子。両目、鼻、耳の順に光を当てられたといいます。
尋問のようなものが終わった後、スーツの男に話しかけられますが、言葉が通じないイッチは黙っているしかありませんでした。どうすれば良いか分からず首をかしげていたイッチは、文字なら通じるかもしれないと思い、携帯電話を取り出し、新規メール作成で「言葉が分かりません」と打って、向かいに座るスーツの男に見せます。
すると、スーツの男はかなり驚いた様子でした。その後、スーツの男は紙に「言葉が分かりません」と書き、その文字を指差してゆっくりと「うよめが分かりません」と発音しました。それに応じてイッチも「言葉が分かりません」と返します。
何かを察知したイッチは、ペンを借りて「あ」と紙に書き、「あ」と発音します。すると、スーツの男も同様に「あ」と発音してうなずきました。「こんにちは」と書いて「こんにちは」と発音すると、スーツの男は一文字ずつ指を指しながら「こにちは」と発音します。しかし、「漢字で京都と書いて京都と言ってみる」と、スーツの男は首を振り「うんた」と発音したそうです。
スーツの男はどこかに電話をかけると、そそくさと退室します。
さらに続く不可解な出来事
次に、警官が食べ物の写真を持ちきて机に並べます。うどんや丼などがあったが、お米に野菜を刺したような、初めて見るものもあったといいます。
「どれか一つ選んで」
そう言われたような気がしたイッチは丼を選びます。
「うんじ」
警官は言葉を話し、もちろん意味は分かりません。警官はその場を離れ、イッチはしばらく放置されます。部屋に残った警官は沈黙を貫き、イッチはできることといえばお茶を飲んだり、周りのものを観察したりすることだけでした。お菓子の包装紙に書かれていたアルファベットも意味不明で、英語ではありませんでした。
食事をしようと立ち上がろうとすると、部屋にいた警官たちがイッチを取り囲み、明らかに臨戦態勢。イッチはビビリながらも大人しく座って過ごします。
しばらくすると、先ほど写真を見せてくれた警官が丼を持って部屋に戻ってきます。中身は普通の玉子丼だったといいます。食べ終わると、まるで待っていたかのように、写真が差し出されます。人物、風景、街並み、しかしどれもイッチの知らないものでした。
そして、再び異常な光景
しばらくやり取りが続きましたが、向こうが無意味と感じたのか、やり取りは終了。イッチは手を引かれて部屋を連れ出されます。部屋の外は空気が重く、今度はSPのような物々しい雰囲気の人物たちに囲まれます。そのまま、大きな真っ黒な車に乗せられ、どこかへ向かうのでした。
大きな反応を見せないスレ民たちも、次第に盛り上がっていきます。イッチは1時間ほど施設内にいたと言います。しかし、いつの間にか眠ってしまい、気がつくと病院のベッドの上でした。
病院での治療と奇妙な終わり
周囲には大勢の医者と看護師。起き上がろうとすると、激しい頭痛がイッチを襲います。ちょっとした衝撃で頭が割れるように痛く、体はうまく動かせません。
医者に顔や頭を触られたり、機械のようなものを耳や鼻に突っ込まれたと言います。されるがままの状態に息苦しさを感じるイッチが「痛い」と声を出すと、医者たちはとんでもなくビビりちらかします。しかし、すぐに肩付近に注射され、イッチの意識は薄れていきます。
意識が戻ったイッチは、壁とベッドとトイレしかないような部屋にいました。天井には監視カメラが4台ついていたといいます。頭痛を我慢して起き上がると、服装は病院の患者服のようなワンピースで、下着は着ていませんでした。ベッドから降りようとしますが、足に力が入らず床に倒れて気絶し、再び目を覚ますとベッドの上だったといいます。
それが数回続き、叫びたくなったと言います。頭痛は次第に快感に変わり、ベッドの上で発狂したり、笑いながら転げ回ったり、監視カメラに向かって一生懸命話しかけたり、とにかく笑いが止まらなかったそうです。
そして、最後の出来事
不定期にベッドに固定された状態でMRIのようなものに入れられます。それを繰り返すうちに、イッチはバグっていき、頭痛、快感、暑さ、寒さ、痒みといった感覚が入れ替わっていきます。
しばらくそんな時間が続き、またMRIに入れられてしまいます。頭が破裂するほどの激しい頭痛が走り、気を失います。再び目を覚ますとベッドの上でしたが、その時、気分と感覚は元通りになっていました。
普通に歩けるようになったイッチは部屋を見回しますが、誰もいませんでした。すると突然、意味不明な言葉が部屋に流れ、扉が開いて普通の服装をしたおじいさんとおばあさんが入ってきました。
二人はいきなりイッチの前にひざまずき、泣きながらわけのわからない言葉を話し続けます。状況や言葉は理解不能でしたが、どうやら謝っているように見えたと言います。
まとめとその後
イッチのあまりにも不可解な話に、草を生やすスレ民が入り乱れ、「これが俗に言う異世界スレか」とワクワクするスレ民も出現しました。
イッチは状況が理解できないまま、おじいさんの両手を握ってみます。すると、おじいさんもおばあさんも号泣。イッチが全く理解できないままいると、再び扉が開き、警備員らしき人物が二人を連れていってしまうのです。
次に現れたのは、スーツを着てネクタイをしめた、丸坊主の白人の子供でした。警備員に守られながらゆっくりとイッチに近づいてくる子供。50cmくらいの距離に近づくと、子供に異変が起こります。
「ボン」という音とともに、子供の首回りは包帯と影のように金属製の板が広がったのです。
イッチはビビってのけぞりますが、子供はじわじわと近づいてきて、右手ゆっくりと差し出します。次の瞬間、イッチは警備員に地面に押さえつけられてしまいます。
「帰ってこい!」
スレ民たちは焦り始めます。警備員に後ろから押さえつけられたイッチの耳に、子供がそっと手を当てます。
そして、物語は続く…
キーハーキー
子供は機械音のような声を発し、押さえつけられているイッチには、耳の穴から何かが入ってくる感覚がありました。もぞもぞとした音がしばらく続いた後、「ブチッ」という音と激しい頭痛が走ったといいます。
イッチは自分の言葉がちゃんと見えているかとスレ民に聞かれ、「ちゃんと見えている」と答えました。どうやら鼓膜を破られたらしく、触れられない部分に触れられている感覚があったと言います。
耳から何かが侵入する恐怖で全身に力を入れましたが、警備員の数は増え、さらに厳しく押さえつけられます。イッチは悲鳴を上げますが、行動は続行。正直このまま死ぬと思ったと言います。
その後から参加してきた新参スレ民たちは、「ヤバイスレを見つけてしまったこと」を面白がりながらも、イッチが書き込みを続けやすいよう、ちゃんと読んでいることを伝える優しさを見せます。
その後も苦痛と恐怖に耐え続けるイッチ。しばらくすると、突然頭の中で「キキーキーカカカカカカ」という音が鳴り始め、その音はどんどん高くなっていきます。頭の中を指で触られたような感覚の後、真ん中から頭をスパッと割られたような感覚があったといいます。
「死んだ」
そう思ったイッチでしたが、体は無事。しかし、音や指の感覚がなくなっていき、耳を触ると大量の血が。間もなく、扉が開き、子供と警備員は部屋を出ていきます。
その流れの中で、イッチの文章が変なのが怖いと書き込むスレ民もいます。
その後、看護師が部屋に入室し、イッチの耳の血を拭いてくれますが、血がついているだけで出血はなかったといいます。看護師が作業を終えると、今度はiPadのようなものを持った医者たちがやってきます。画面を見せられますが、警察署で見せられたものと同じような画像ばかりでした。
疲れて、空腹だったイッチは、だるそうに反応します。しかし次の画像が表示された時、イッチは思わず反応してしまいます。その画像は、イッチが住んでいたマンションの外観でした。そして、その次はイッチの部屋の入り口の画像。
謎は深まるばかり
画像は、イッチの部屋の中に入り、リビング、キッチン、風呂場、寝室と移動していきます。キッチンから外を見る限り、その映像は私たちの現実世界のように見えました。
その後、すべての映像を見せたのか、画面は真っ暗になり、なぜか熱く語り始める医者たち。スレ民はイッチの記憶を映像化して見せているのではないかと推測します。ただ面白がっているだけのスレ民が、次の書き込みを待ち受けます。
しばらくして、医者たちが熱く語っている中、一人の医者がiPadのようなもの出します。すると、周りの医者がそれを阻止しようとして、喧嘩のような雰囲気になったといいます。すぐに警備員が仲裁に入り、今度は怒鳴り合いが始まります。
しばらく議論が続きますが、結局iPadを出した医者は負けたようで大人しくなってしまいます。すると、別の医者がiPadを出してきて、また意味不明な人物や風景の写真を見せられます。5人ほどの医者たちが順番に画像を見せます。最初の医者以外、意味不明なものばかりでした。
最後に、議論に負けた医者がニヤニヤしながらiPadを取り出し、イッチに見せます。画面には「いがらさくら」と映し出されていました。もちろんイッチは意味がわかりません。医者はニヤニヤしながら画面を変え続けます。イッチは無反応でしたが、医者はニヤニヤしながら画面を変え続け、時折、堪えきれないかのようにぷっと吹き出したりしていたといいます。
ここで、答えを急ぐスレ民が、イッチが戻れたのかを確認。イッチも「ちゃんと戻ってきてますよ」と返します。ニヤニヤしたり吹き出したりする医者たちに、周りの医者たちは「やめろよ」といった感じで肩を叩いたりしていたそうです。
その時、iPadの画像が、中庭の画像に切り替わります。思わず反応してしまうイッチ。マンションの外観、キッチン、寝室、リビングよりも、なぜか中庭に懐かしさを感じてしまいます。医者はゲラゲラ笑いながらiPadをイッチの顔に近づけてきます。すると、iPadがイッチの顔面に当たった拍子に、医者は警備員に押さえつけられ、退場させられます。
残った医者たちはイッチに頭を下げ、警備員とともに部屋を出て行きました。
ここで、感の良い書き込み主や、自分たちの不足ぶりを棚に上げて、登場した医者たちの漢字の悪さを指摘するスレ民が現れます。
部屋に残されたイッチは眠ろうとしますが、空腹と喉の渇きのためなかなか寝付けません。ベッドから出て、監視カメラ越しに食事を要求しますが、反応なし。腹を立てて壁にキックを見舞いますが、それも無駄でした。
物語の結末
何もできず、眠気だけが募ったイッチはベッドに戻ります。その時、ベッドの隙間になにかが挟まっているのを見つけます。それは紙切れで、「つとそこ」と書かれていました。
意味の分かる言葉ですが、疑問に思うイッチ。それを考えていると、突然部屋の扉が勢いよく開きます。「まさか、どっきり? 看板を持った誰かが入ってくるんじゃないだろうか?」とセンスのある書き込みをするスレ民をスルーし、イッチは続けます。
すごい勢いで部屋に入ってきた警備員たちに押さえつけられるイッチ。警備員たちはイッチの持っていた紙を回収し、すぐに去ってしまいます。
残されたイッチは、突然現れた謎の日本語「ずっとそこに」の意味を考えることになるのでした。
マンションの不可解な中庭、現実と微妙にズレた異世界、不気味に笑う医者の真意、そして「ずっとそこに」隠された意味とは…。 この物語は、後編へと続きます。