1959年ニューヨーク、執拗なストーカーと女性の壮絶な闘い、そして驚愕の結末
- 2024-12-31
1959年ニューヨーク、執拗なストーカーと女性の壮絶な闘い、そして驚愕の結末
1959年6月14日、アメリカ・ニューヨーク州ブロンクス。結婚を間近に控えたリンダ・リースは、元恋人バート・ブガッチからの執拗なストーカー行為に苦しんでいました。バートは弁護士として成功を収めていた一方で、異常なまでの執着心をリンダに向け、度重なる電話やラブレター、プレゼント攻勢を仕掛けます。
執拗なストーカー、バートの正体
バートは1957年の秋、公園でリンダと出会い、一目惚れ。その後、何度も執拗に住所と電話番号を聞き出します。リンダは、一見紳士的なバートに悪い印象を持つことはありませんでしたが、彼の執着は次第にエスカレート。デートの誘いを断ると、リンダは彼の怒りを買ってしまいます。 リンダの母親は、バートがニューヨークで弁護士事務所を構える優秀な男性であることを知り、結婚相手としてふさわしいと考えていました。しかし、それは悲劇の始まりにすぎませんでした。
リンダとバートの出会いから交際まで
リンダは非常に美しい女性で、バートは彼女に一目惚れしました。彼は紳士的な態度でリンダに近づき、デートに誘いました。リンダは当初、バートを好意的に見ていましたが、彼の執拗なアプローチに戸惑い始めます。 それでも、母親の勧めもあり、何度か食事を共にするうちに、バートの人物像や成功への情熱に惹かれ、次第に心を開いていきました。彼の多様な事業(弁護士、映画プロデューサー、ナイトクラブ経営)の話に、リンダは刺激を受け、バートとのデートはまるで「お姫様」になったかのような気分にさせてくれるものでした。
バートの恐ろしい真の姿
しかし、バートの真の姿は、誰にも知られていませんでした。彼はリンダにプロポーズしますが、その裏には恐ろしい秘密が隠されていました。 実は、バートには既に妻と障害を持つ一人娘がいました。リンダは、知人からバートが既婚者であることを告げられます。しかし、バートは妻と離婚する意思を示し、離婚証明書をリンダに提示します。 しかし、その証明書は偽造されたものでした。この事実を知ったリンダは激怒します。
硫酸による襲撃
バートは弁護士としての立場を悪用し、偽の離婚証明書を作成していたのです。リンダが役所に確認に行ったことで、バートの嘘が暴かれます。 怒りに燃えるリンダに、バートは更なる暴挙に出ます。彼はマフィアと結託し、配達員を装ってリンダに硫酸を浴びせかけます。彼女は顔に重傷を負い、視力を失ってしまいます。
警察への通報とストーカー規制法の制定
リンダはすぐに警察へ通報しますが、当時の法律ではストーカー行為は十分な犯罪として扱われていませんでした。警察は「当事者同士で解決してください」と冷たく突き放します。 この事件は、アメリカにおけるストーカー規制法制定のきっかけの一つとなりました。 1988年、カリフォルニア州で職場のパートナーにストーカー行為をした男性が7人を殺害した事件や、女優レベッカ・シェイファーがストーカーに銃殺された事件などが相次ぎ、1990年にアメリカで最初のストーカー規制法が制定されることとなります。 この法律では、「意図的で悪意があり、繰り返し行われる嫌がらせやつきまとい」がストーカー行為として規定されました。殺人に発展した場合にのみ、ストーカーが犯罪者として認識されるという状況から、法律の整備が進むことになります。
リンダの苦悩と新たな恋
硫酸事件の後、リンダは3ヶ月間の入院を余儀なくされました。 彼女は仕事を探したり、旅行に出かけたりするなど、以前の生活を取り戻そうと努力しました。しかし、心の傷は深く、恋愛に踏み出すことは困難でした。27歳の頃、新しいプロポーズを受けますが、リンダの傷ついた目をみた男性は静かに去っていきました。リンダは、時折届くバートの手紙に、深い絶望を感じていました。
バートの執拗な手紙
バートは刑務所からリンダに手紙を送り続けました。 その手紙には、「僕は永遠に君のものだ」「愛している」といった言葉が綴られていました。 14年間も続くバートの手紙は、ある日突然途絶えます。 それは、1974年3月のことでした。
テレビ出演と衝撃のプロポーズ
バートは14年の刑期を終え、テレビ番組に出演します。そこで彼は、リンダへの変わらぬ愛を告白し、プロポーズします。 実は、バートの手紙が途絶えたのは、裁判所からリンダへの接近禁止令が出されていたためでした。 テレビでのプロポーズは、バートがリンダに想いを伝える唯一の方法だったのです。
リンダの選択と驚愕の結末
リンダは、バートへの怒りを感じながらも、テレビでのプロポーズを見て心を揺さぶられました。そして、数ヶ月後、リンダはバートとの結婚を選びます。 リンダは、バートに自分の目を傷つけられたままの姿を見せつけることで、彼の罪の重さを突きつけ、彼を裁こうとしたのです。 しかし、彼女は、バートが刑務所で生まれ変わったように変わっていたことに気づきました。 バートは心から後悔し、リンダへの愛を改めて伝えました。
リンダは、自身の傷ついた目を生涯をかけて看病してもらうために、バートと結婚することを決めたのです。 1974年11月27日、二人は結婚しました。バートは、その後もリンダを深く愛し、献身的に支え続けたと言われています。 リンダは75歳で亡くなりましたが、夫バートはそれから7年後、2020年に亡くなりました。
まとめ:執着と許し、そして人生の再生
この物語は、執拗なストーカー行為の恐ろしさを浮き彫りにするだけでなく、被害者であるリンダの強さと、許し、そして人生の再生を描いた、複雑で感動的な物語です。 バートの行為は決して許されるものではありませんが、リンダの選択と二人のその後の人生は、私たちに様々なことを考えさせます。 これは、ただ単なるストーカー事件の物語ではなく、愛、憎しみ、許し、そして人間の複雑な心の機微を描いた人間ドラマです。 この事件は、私たちにストーカー行為の危険性と、その被害者の苦悩を改めて認識させるものでした。そして、同時に、人間の心の奥底にある、復讐心と許しという相反する感情の共存の可能性も示唆しているのです。
余談:アシッドアタックについて
この事件で使用された硫酸による攻撃は、アシッドアタック(酸性液体による攻撃)として知られており、世界中で多くの被害者を出し続けています。 インドなどでは特に問題が深刻化しており、イスラム圏でも同様の事件が報告されています。 このような残忍な犯罪は決して許されるべきではなく、厳しく取り締まる必要があります。
この恐ろしい事件から学ぶべきことは、ストーカー行為の早期発見と対策の重要性、そして被害者のケアの必要性です。 私たちは、この物語を通して、改めてストーカー問題について考え、学び、そして被害者への理解を深める必要があります。